レジデントノート本誌に掲載された「こんなにも面白い医学の世界 からだのトリビア教えます」をWEBでも順次公開してまいります!
以前(2024年4月号 第115回)に排泄の音についてお話ししたことがありましたが,今回は水に浮く便と沈む便の違いは何か? どちらの方が「健康な便」なのか? 便そのものについての論争の紹介です.
私はヘビーメタルが大好きで,長髪のミュージシャンが音楽にあわせて頭を振るヘッドバンギングは実に格好よく,憧れたものです.しかし,首を激しく振る動作は頭頸部傷害のリスクともいわれており,赤ちゃんを激しく揺さぶることによって起こる乳幼児揺さぶられ症候群という疾患概念もありますし,あまり身体にいいこととは思えません.
「美容,健康のために水を毎日2 L飲みます」とモデルや女優さんがSNSなどに投稿しているのをよく見かけます.確かに彼女らは美しい体形を保っていますが,あれって本当に効果があるのでしょうか?
私たちが子どもの頃は,虫歯に正露丸を詰めていました.なんとなく痛みがとれるような気もしましたし,あの独特のにおいと味で虫歯どころではなかったのかもしれません.正露丸はこれまで長く市販されてきた薬なので日本国民に信頼されていることは間違いなく,いまも救急外来を受診する患者さんに「正露丸を飲んだ」と言われる方が多くいます.
排尿に関する研究はこれまで多くされていて,例えば寒いときや緊張したときに尿意を催すのは,視床下部や交感神経が刺激されることによると理解されてきました.しかし,排尿のメカニズムはとても複雑で,これまで,膀胱がいっぱいになると尿意を感じ,排尿中には膀胱の中身が減っていく感覚,つまり,膀胱の伸縮を感じる感覚というのはよくわかっていませんでした.
アメリカは肥満大国で,体重が重すぎると膝や腰を痛め,そのために動けなくなって運動不足になり,さらに体重が増える,という悪循環に陥り,重篤な健康被害に悩む患者さんも多くおられました.肥満治療の1つに胃の一部を切除する減量手術があります.
著者が所属する高度救命救急センターには,激辛が大好きな先生がいます.辛いものは代謝を上げるので痩せる,と主張していますが,彼のお腹はかなり大きいです.でも,確かに辛いものを食べると痩せるという話は聞いたことがあります.実際はどうなのでしょうか.
アメリカの作家,O・ヘンリーの「最後の一葉」という感動的な短編小説をご存じでしょうか? 病室の窓から見える蔦の葉がすべて落ちたら自分も死ぬ,と思い込んだ若い女性の患者さんが,1枚だけ散らずに残った葉っぱに勇気をもらい元気になりますが,実はその葉っぱは画家が壁に書いた絵であった,という美しい話です.
排泄するときの音を他人に聞かれるのは嫌なもので,最近トイレには排泄音を消す装置がついています.一般的には水が流れるような音が出ますが,あの音は排泄音に近い周波数に合わせてあり,排泄音をマスクできるよう調整してあるそうです.単純に大きな音を出せば排泄音がかき消されるわけではなく,咳払いをしてもおならの音が消えないことになります.
暗くて寒い冬の朝はベッドから出るのが億劫です.最近の研究で人間の睡眠は季節によって質の変化があることがわかりました.
救急外来は「社会の縮図」であり,現実に起きている社会問題と直接リンクしていて,私たちの救命救急センターにも,ひきこもり状態にある患者さんが救急搬送されることは珍しくありません.
私は救急外来で血圧がむちゃくちゃ高い患者さんを診たとき「キリンの血圧やん」とつぶやきながら降圧するのですが,キリンの血圧は本当に高いのでしょうか?
毎年冬場に寒くなると,季節性インフルエンザや風邪が流行します.実はこの理由はあまりわかっておらず,そもそも上気道感染症の詳しい病態や免疫自体よくわかっていませんでした.最近,細胞外小胞(extracellular vesicle:EV)が上気道感染に重要な役割を果たしていることが明らかになりました.
私の自宅は山のふもとにあるので,ほぼ毎週のように登山をして森林浴をしています.自然に触れると気持ちがよいですし,軽い疲労感は睡眠も改善するので,登山は最もストレス解消ができる方法だと自分では思っています.しかし,実際に森林浴にはそのような医学的な効果はあるのでしょうか?
Chronobiology(時間生物学),つまり生物の体内時計を研究する学問が最近発展しています.地球の上に住んでいれば,女性の月経などのように太陽や月の周期の影響を受けることは不思議ではなく,なかでも24時間周期のものはサーカディアンリズム(概日リズム)といいます.
腸は第二の脳ともいわれており,腸内細菌と脳・中枢神経機能との関係は最近,さかんに研究が行われています.なかでも,自閉スペクトラム症の子どもたちの多くには,慢性的な腹痛,消化不良,下痢,便秘など,消化器系の問題があることが知られており,これらの症状は注意力や学習能力,または行動に悪影響を及ぼしている可能性があるといわれています.
冷や汗が出るほど強い背部痛で救急外来を受診される患者さんのなかに尿路結石の方が多くおられます.尿路結石は,生涯に男性では11%,女性では6%に起きるとされる一般的な疾患です.救急外来ではなかなか根治的な治療を行うことができず,輸液をして,あとは鎮痛剤を処方して排石を待つ,という対応になることが多いのですが,早く排石させるためにジェットコースターがよい,という研究があります.
皆さんご存知の「血液脳関門」は検問所のような役割をしていて,脳と血管の物質の行き来を管理しています.一方,鼻粘膜に存在する嗅神経は直接脳とつながっており,この鼻粘膜から脳への経路では検問にかかることなく,さまざまなタンパク質やウイルスが中枢神経系に入っていく近道になります.つまり,中枢神経への直接的な薬の投与経路として考えられるわけで,さかんに経鼻投与の研究が行われています.
先日,コロナ禍でなかなか行けなかった国際学会に参加し,その学会の合間にジョンソン宇宙センターに行ってきました.「第13回 宇宙飛行士が吸う空気」で少し触れましたが,私はかつてクリーブランドにあるNASAで少し研究をしたことがあります.ジョンソン宇宙センターでも宇宙に関する興味深い研究が活発に行われており,久しぶりに興奮してこの原稿を書きました.
かつて「ショックになる患者さんは乳酸のニオイがするからわかる」といっていた同僚の先生がいました.実際には乳酸そのものは無臭といわれていますし,その先生は何のニオイを感知していたのか定かではありませんが,実際にショックになっていたので,すごいと思った記憶があります.確かにニオイは臨床で診断の助けになりますし,われわれ人間よりはるかに優れた嗅覚をもつ犬は,麻薬捜査や災害時の生存者の発見など,すでにさまざまな場面で嗅覚を活かして活躍しています.
昔から水は一気にたくさん飲めないのに,ビールは飲めるのはなぜか? という議論がされてきました.私が学生の頃には「アルコールは胃から吸収されるから」という説明を聞いた記憶があります.でもビールのアルコール濃度はたかだか5%程度,ビールを1 L飲んだとして,仮にそのアルコール分がすべて胃で吸収されたとしても,たったの50 mLでしかありません.しかも,実際にはアルコールは胃だけでなく小腸でも吸収されますので「アルコールは胃で吸収されるから,ビールはたくさん飲める」という説明はあまり納得できません.
自分の誕生日に亡くなる人が多い,という都市伝説は古くからまことしやかに言われています.実際に日本の人口動態調査のデータを分析した研究によると,誕生日以外の死亡者数の平均が約5,700人であるのに対し,誕生日に死亡した人の数は有意に多く約8,000人であり,その影響が顕著にみられる死因は自殺だったそうです.
冬になるとインフルエンザや風邪がはやり出します.このような患者さんを診ていますと,あくまで私の印象ですが,男性患者さんの方が大袈裟に症状を訴えるような気がします.実際に欧米では“Man Flu”と呼ばれ,男性が風邪などの軽い病気の症状をあたかも重いように訴えることを揶揄した言葉があります.男性は意外に痛みや病気に弱いという偏見に基づくものかと思っていましたが,実際に男性は女性に比べて病気に弱いことが研究でわかっています.
私には無精ヒゲがあります.剃るのが面倒くさいのもありますが,救急医は時に粗暴な患者さんと対面することもあり,少し強面の方がいいだろう,という考えで剃っていません.
これだけ飲酒運転の取り締まりが行われても,なお飲酒運転による交通事故死はなくなりません.世界的にも交通事故死の約4割はお酒が深く関係しているともいわれ,その経済的損失は大変大きいものです.一方で,お酒を飲んで頭部外傷を受けた患者さんは,予後がよくなるという報告があります.
昔ほどではないですが,相撲とプロ野球は日本では長い間,幅広い世代に愛されている人気のスポーツです.この相撲の本場所中やプロ野球の頂点を決める日本シリーズの開催期間中に院外心停止が増加する,という研究結果があります.
私は自家用車をもっていないので,移動は自転車が中心です.自転車の健康効果については小児から高齢者まで幅広く研究が行われていますが,どの研究でも心肺機能を改善し,心臓病や癌による死亡率,肥満のリスクを減少させることが示されており,適度なサイクリングが健康によいのは疑いの余地はありません1).
「ポトマニア(potomania)」という言葉は,欧米ではよく耳にしますが日本ではあまり聞き慣れない言葉です.ポトマニアとは,電解質や溶質に乏しいビール系のアルコール飲料を大量に,慢性的に飲んだことによって起こる低ナトリウム血症のことをさす言葉で,血中のNaが135 mEq/L未満である状態をいいます1).症状は,低ナトリウム血症に起因するけいれんなどの神経学的異常,浮腫,筋力低下などがあります,ポトマニアという疾患名はビール系アルコール飲料の常習大量摂取の場合に限られ,水中毒などの他の低浸透圧症候群とは区別されますが,基本的には病態は同じです2).
アメリカのボルチモアでは,1990年1月から1991年7月までの19カ月の間に75人の野球バットによる外傷患者が外傷センターに搬送されました.このうち26%に遷延する頭蓋内出血が認められ,死亡例もありました1).また,フィラデルフィアでも1989年1月から1990年12月の2年間に74人がバットによる外傷で入院し,患者の9割が薬物依存でした.7%が緊急手術を要し,4%が重篤な後遺症が残ったと報告されています.これらの都市にはあまり治安が良くない地域があり,銃や刃物による傷害事件が多いのですが,“棒で殴る”という古典的な方法が予想以上に多いことに驚かされます2).
新型コロナウイルスの蔓延で,マスクを着けて外出することが一般的になりました.コンプライアンスの問題で容姿の話題をもち出すことははばかられますが,いわゆる「マスク美人」「マスクイケメン」と呼ばれるように,マスクで顔の下半分が隠れることによる周囲に与える印象の変化や感情表現,コミュニケーションについて,多くの研究がなされています.
トイレや調理場で排水口のつまりをなおすために棒の先にゴムの吸引機が付いた道具がありますよね.私はあの道具の名前を知らなかったのですが,「ラバーカップ」というそうです.英語ではPlungerといいますが,このラバーカップを用いて心肺蘇生を行った人がいます1).
筋肉痛や関節痛に手軽に貼れる湿布薬は,特に日本では大変よく売られています.湿布はパップ剤とも呼ばれ,その語源は「どろどろしたもの」であり,紀元前から皮膚に塗って使われていたようです.日本で湿布薬が医薬品として発売されたのはわりと最近のことです.今のような布状のシートに薬剤を伸ばして付着させる技術は意外と難しく,その開発に数十年を要したからであるといわれています.
働き方改革が提唱され,医療者はできるだけ仕事や労働時間を減らすことが求められています.その手段として最たるものが人工知能(artificial intelligence:AI)の利用であり,今後どんどん臨床の現場に導入され,疲労や人的ミスによる診断,治療の精度低下を防ぎ,人員不足による業務負担の軽減に大きな役割を果たしてくれることでしょう.一方で,機械は信用できないという人のために,というわけではないのでしょうが,訓練した動物を臨床現場で活用する研究も行われています.
アメリカに住んでいたころ,私の息子の少年野球チームの試合中,投手が投げた球が背中に当たったバッターの親があわてて駆け寄って,市販の鎮痛剤を山ほど手にすくうやいなや子どもの口に入れ,子どもはそれをバリバリ噛んでコーラで流し込んでいました.親が,さあこれで痛みは消える,と言って子どもを一塁ベースに送り届け,満足そうにしていたのを見て私は「これがアメリカか」と感心したものです.日本でも,かつて甲子園球児が痛み止めを注射しながら連投して肩を壊す,といった例が多数あり,投球回数や試合日程が見直された経緯があります.
岡山県の特産品に,黄ニラというやわらかくて少し甘いニラがあり,これは高級食材で珍しいものだそうです.一般的にみる緑色のニラは,私はレバニラ炒めくらいしか思いつかないのですが,レシピは無限にあるようで日本ではニラはたいへん多く消費されています.栽培が簡単で,すぐに増えるので家庭菜園で育てられることも多いのですが,ニラはスイセンの葉とよく似ているため,間違えてスイセンの葉を食べてしまうということが起こります.スイセンにはアルカロイドという毒が含まれているので「ニラと間違えて食べて中毒になった」というのは比較的よく聞く話です.注意喚起がされていても,毎年10人以上の患者さんが発生し,2016年には北海道で死亡例も報告されており,注意が必要です1).
現在の日本においては銃創や爆傷は比較的珍しく,多くの医師にとってなじみの薄いものです.しかし,現実には今も世界のどこかでは戦争が起きており,特にイラク戦争後,戦地に派遣された兵士や退役軍人が精神疾患を発症し,自殺が増えていることが問題となっています.この現象は第一次世界大戦当時から認識されており,戦地での過酷な体験による「心的外傷後ストレス障害」(post traumatic stress disorder:PTSD)などの精神疾患が原因と考えられ,カウンセリングの対象となっています.
臨床医も人間ですから,その判断能力は臨床技能や知識以外にもさまざまな理由に左右され,時には誤った判断をしてしまうこともあります.例えば,長時間にわたる労働による疲労もその理由の1つにあげられています.私も地域の病院の休日輪番の担当をすることが多いのですが,朝から晩まで延々さまざまな症状の外来患者さんを診なければならず,午前と午後とでは明らかに診療の質が違うのが自分でもわかります.
数年前から筋トレが中年男性の間で流行しているようです.何を隠そう私もストレス解消のためジムに通っていますが(最近は自粛中),ジムの一角に「加圧トレーニング」という何やら怪しげなプログラムを目にします.
加圧トレーニングは,「四肢の付け根を縛って血流を制限したまま負荷をかけることで骨格筋の成長を促進させ,筋力増強ができる」というものだそうです.比較的弱い負荷であっても大きな効果があるといわれ,実際に病院のリハビリテーションでも使われています.メカニズムはまだ確かではありませんが,成長ホルモンを誘導する,嫌気性環境で産生されたラジカルやプロトン,乳酸が筋肉増強のシグナルを誘導する,などさまざまな説が提唱されています1).この「加圧トレーニング」の場合は,手足の血流を制限することで,縛った手足に対する直接の効果をみているわけです.
病院外で心肺停止の患者さんがいたとき,近くにいる人が直ちに心肺蘇生をした場合の方が,しない場合よりも約2倍生存率や社会復帰の確率が上がることはよく知られた事実です.一方で,自分以外に傍観者(Bystander)がいるときには率先して行動を起こすことを躊躇する集団心理が働きます.何か行動することで責任や非難が自分に及ぶことを恐れるなどの理由があるでしょう.これはBystander effect(傍観者効果)といわれる現象であり,古くから知られています1).
硫化水素(H2S)は,温泉地や火山などで発生する有名な毒ガスです.この危険な硫化水素ですが,1990年代に日本人によって動物の脳に硫化水素が存在することが報告され,その後,生体内のさまざまな組織で恒常的に硫化水素が合成されていることがわかりました1).危険なガスを生体がなぜつくるのか,またその生理作用については長年謎であったのですが,最近,硫化水素の働きがさらに研究され,治療に応用されるようになってきました2).
新型コロナウイルス感染症の流行で自殺が増えています.外出自粛のため家庭で過ごす時間が増えたことが家族関係などに微妙な影響を及ぼしているのだとも言われていますが,経済的な問題を抱えた方も少なくないでしょう.医療は本人の意思が尊重されるべきで,自殺を試みる患者さんを無理やり救命することに対する倫理的な議論がないわけではありません.私は救命救急医ですので,生命の危機にある患者さんを救命する使命があります.また,自殺を企てる患者さんの多くは精神疾患を抱えていて,辛くもがき苦しんでやむなく自殺という選択をするのであり,これは精神疾患の症状であるから迷うことなく救命治療の対象となる,と考えることにしています.さまざまな議論があるなかで,自殺企図者の診療は救急現場で非常に重要であると思います.
2005年にイングランドで記憶喪失の男性が保護され,名前がわからなかったのですがピアノが上手であったことから「ピアノマン」と呼ばれて話題になったことがありました.後に記憶喪失は芝居であったともいわれていますが,一般的に記憶喪失と呼ばれるものの多くは詐病であるという説があります.私も自分で実際に一過性全健忘(Transient Global amnesia:TGA)を診るまでは,そんな都合がいい記憶喪失なんてないだろう,と思っていました.
今の研修医の先生は全く知らないことかもしれませんが,かつて傷の消毒といえば,「赤チン(正式名:マーキュロクロム液)」や「オキシドール」でした.もうそのどちらも日常で見かけることが少なくなりました.赤チンを見なくなったのは,製造過程で出てくる水銀が問題になったためで,製造する会社が少なくなり,法律の規制もあって2020年で国内で赤チンを製造する会社はなくなってしまいました.
救命救急センターには,子どもが朝起きてこないので家族が様子を見に行くと布団の中で心停止していた,といった学童期の患者さんが稀に搬送されてきます.多くの場合,目撃がない心停止であり,救命できない,あるいは心拍が再開しても重大な後遺症を残してしまうことが多く,患者さん本人やご家族ばかりでなく,われわれも本当に辛い経験をします.死因が臨床的に特定できない場合には司法解剖されることがありますが,それでも特定できないことがあります.
今は「アンチエイジング」という言葉が使われますが,大昔から人間は「若返り」や「不老不死」への思いが強く,かつての権力者はこの欲望を成し遂げようとずいぶん無茶をしてきました.中世ヨーロッパでは,若返りを目的として若い人からの輸血が多く行われ,当たり前ですが若返りの効果よりも輸血の合併症で多くの命が犠牲になったといわれています.
アメリカ海軍の30歳の兵士が,独り言やテレビの前で踊りだす,ライフルにキスするといった異常行動を突然しだしたそうです.軍医の診察を受けたところ,重度のうつ病やPTSDといった精神疾患が疑われました.しかし,その後も,不穏や,周囲に攻撃的になって暴れ,拘束されて鎮静剤を投与されるといったことを起こしていました.
われわれの研究室では,救急医学の研究のために犠牲となったネズミの祭壇をつくり,日々感謝しています.しかし,研究室の外ではネズミは感染症を媒介したり,大切なものをかじったりする嫌われ者で,ネズミを駆除するために古くから殺鼠剤が使われてきました.
ある休日の輪番日,「口の中が燃えるように痛い」という60歳代の女性が受診されました.舌や口の中を診察しましたが,発赤やアフタのような口内炎はなく,白苔の付着もありませんでした.微量元素欠乏やSjögren症候群,ヘルペスなども考えて,「明日内科で相談してみてください」と紹介状を書き鎮痛薬を処方して帰宅いただきましたが,翌月に同じ患者さんが,「いろいろと調べたけれど原因がわからず全然治らない」といって救急外来に来られました.
スーパー銭湯などのサウナで中高年の男性が汗を流し,その後水風呂にバッシャーンと飛び込むのをみると,いかにも身体に悪そうで救急患者が増えるのではないかと気が気ではありません.なので,私は個人的にはサウナはあまり好きではないのですが,サウナの愛好家は多くいます.果たしてサウナは健康によいのでしょうか?
ヴードゥー教は,ハイチや西アフリカなどで広まっているいわゆる民間信仰で,信者は世界に5千万人以上いるといわれています.動物の生贄を使い,独特な踊りを交えた儀式は有名です.映画などで出てくる「ゾンビ」のルーツもヴードゥー教にあるとされており,なんとなく怖い印象があります.そんなヴードゥー教で呪術のときに使われる,ヴードゥー人形という人形があります.
掲載号をご覧ください.
昔はなぜかおばあちゃんは手首に輪ゴムを巻いていました.最近では,若者たちもファッション目的で手首にミサンガを巻いたり,カラフルな輪ゴムを付けたりすることがあります.
以前に勤務していた病院の近くで,真夏にレゲエの野外ライブがありました.そのライブではお酒を飲みまくるので毎年数十人の急性アルコール中毒患者さんが病院に殺到し,さすがに問題視されて数年で中止になってしまいました.
新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の患者さんが,嗅覚障害・味覚障害を訴えることが注目されています.もちろん,これらの症状は亜鉛などの欠乏や薬剤性にもみられますが,今回は新型コロナウイルスがどのようにこれらの症状を引き起こすか,に注目したいと思います.
今や,多くの外科手術は鏡視下で行われます.傷が小さく疼痛が少なく術後回復も早いことから今では当然の術式ですが,私が研修医の頃はまだ今ほど鏡視下手術が一般的ではなく,腹腔鏡下胆のう摘出術がようやく普通に行われだした頃でした.
高層マンションの最上階に住む夢をもっている人は,視野が広く,さまざまな面で成功を収めることが多いと占いの本に書いてありました.確かに高層マンションの最上階で暮らしている人は,お金持ちで優雅にみえます.
花粉症でくしゃみや鼻をかんでいる人をよくみかける時期になりました.以前,夜勤をしていた夜中に「鼻をかんだら片目が飛び出た」という患者さんの収容依頼がありました.バイタルサインはすべて安定,視力低下はなし,痛みなし,充血は軽度でした.研修医の先生は必死で鑑別診断をあげて,甲状腺機能亢進症やアレルギー,腫瘍の検査までしようとしていましたが,夜中に急に起きるものではなさそうです.
リンゴはアダムとイブが食べた禁断の果実であるという説があります.スティーブ・ジョブズ氏は,自分が創立した会社を「アップル」と命名しました.また,最近では「リンゴダイエット」なるものも出てきました.このように一般にリンゴにはよいイメージがあります.1866年頃からイギリスのウエールズ地方で “An apple a day keeps the doctor away”(1日1個のリンゴで医者いらず)という諺が言われはじめ,これ以来リンゴは民衆の健康習慣の象徴のように思われてきました1).
低血糖は実にさまざまな症状を呈するので,われわれ救急医はとにかく少しでも意識がおかしい患者さんには,必ず血糖測定をすることが鉄則になっています.今回は皆さんがよくご存知の意外なものが,実は低血糖の原因になっていたことをご紹介します.
マラソンのトレーニングには標高1,500〜2,000 m程の場所で行う「高地トレーニング」という方法があります.ではもっと標高が高くなるとどうなるのでしょうか.標高8,400 mだと大気圧は272 mmHg,PIO2は47 mmHgまで低下します.このような環境で人間の身体はどこまで順応できるのでしょう.
私の血液型はA型なのですが,それを聞いた人はみんな驚きます.私の性格は典型的なA型ではないからだそうです.血液型を決定する抗原は血球だけではなく,臓器や毛髪にも分布しているため,もはや「血液型」という言葉そのものが適当ではないのかもしれません.
数年前に「女性に心肺蘇生術をしたらセクハラで訴えられる」というSNSの投稿があり,救命救急の業界に衝撃が走ったことがありました.もちろんデマなのですが,たしかに自動体外式除細動器(AED)の電極パッドを貼るときには胸をはだけさせますし,病院の外で心肺蘇生(CPR)をやらなければならない場面では,相手が女性であれば躊躇する人がいるかもしれません.
岡山大学 救命救急・災害医学教室では,毎年5月にミャンマーへ救急のセミナーをしに行っています.ミャンマーには首都圏でも野良犬がたくさんいて,どれも目が鋭く痩せており,ちょっとやばい感じがするのですが,案の定,犬咬傷はミャンマーの救急外来で大変多く扱う外傷です.ところで,犬の祖先は狼ですが,満月になると男が凶暴な狼男に変身するように,犬は満月の日により凶暴になって犬咬傷が増えるのでしょうか?
ライム病(Lyme病)は,マダニによって媒介されるボレリアという細菌による人獣共通の感染症です.アメリカのコネチカット州ライムで原因不明の関節炎が流行し,後に感染症であることがわかったため,この名がついています1).欧米では年間数万人が罹患しているといわれていますが,日本では年間数十例しか報告されておらず,比較的まれな疾患です.感染初期には,目玉のような紅斑と,インフルエンザのような筋肉痛,関節痛,頭痛,発熱,悪寒,倦怠感を呈し,3〜4週間後には症状が全身に広がって不整脈や関節炎,神経症状など多彩な症状が出てきます.
1990年代に「芸能人は歯が命」というキャッチコピーの歯磨き粉のCMがありましたが,8月1日は「歯が命の日」だそうです.集中治療室での歯磨きを含む口腔内ケアが,呼吸器合併症を減らし予後を改善する,という事実にもはや反論する人はいないでしょう1).このほかに,口腔内の衛生は糖尿病や動脈硬化にも深く関係しています.
「白い粉」といっても,皆さんが想像するようなドラッグではなく,野球や陸上競技でグラウンドにラインを引くときに使う白い粉のことをお話ししたいと思います.
救急をやっていると,検査データは落ち着いているのに,なんとなく不穏な雰囲気を醸し出す患者さんに出会うことがあります.「この患者さん,なんかやばいんやない?」と感じたことのある人はいるかと思います.そういった第六感のことを「Gut Feeling」と言います.「腸で感じる」とは,非常にうまい表現だと思いますが,これは欧米の臨床では実際によく使われる言葉です.最近はエビデンスに基づくアセスメントが強調され,第六感などと言っていると若い先生に馬鹿にされますが,そんなことはない,という研究をご紹介します.
岡山県西部の笠岡市には,「カブトガニ博物館」という施設があり,笠岡市のカブトガニ繁殖地は天然記念物に指定されています.カブトガニは,裏返してみるとまさに映画に出てくるエイリアンそのもので,あまり愛される存在ではないかもしれませんが,実は医学に多大な貢献をしてくれています.
研修医の先生が働くような大きな病院では,CTは当たり前のようにあり,いつでも撮影できるところも多いと思います.実はこれは国際的には異常なことで,先進国のなかでも日本のCTの数は世界一です.
春の学会シーズンが近づいてきました.専門医の取得や維持のため,また発表や聴講など自らの研鑽のために学会に出席することは医師として必要なことです.
子どもの頃,「みかんを食べ過ぎると黄色くなるよ」と親から注意され,そんな馬鹿なことがあるかと思っていましたが,実際に掌が黄色くなって驚いた覚えがあります.
毎年お正月になると,餅をのどに詰まらせた高齢者の死亡例が報告されます.私も何人も餅を詰まらせて心肺停止になった患者さんを診たことがあります.今回はお正月を控え,餅は意外と危ないものだというお話をしたいと思います.
最近,加熱式タバコを吸う人をよく見かけます.実際に加熱式タバコで最大のシェアをもつIQOS(アイコス:加熱式タバコの一製品)の利用者は,2016年で喫煙者全体の0.6%でしたが,2017年では3.6%と急増しています.
何でも食べ過ぎはよくないですが,秋の味覚であるぎんなんの食べ過ぎはしばしば問題になります.以前,ある病院で救急当番を手伝っていたとき,特に既往がない男性が急に痙攣を起こして搬送されてきました.
ベーチェット病は(Behçet’s disease)は,口腔粘膜のアフタ性潰瘍,外陰部潰瘍,皮膚症状,眼症状の4つを主症状とする慢性再発性の全身性炎症性疾患ですが,別名「シルクロード病」と呼ばれています.「c」にヒゲがついたような文字を含むBehçet病は1937年にトルコのイスタンブール大学皮膚科のHulusi Behçet教授にちなんで命名されています.
以前,血液に関する原稿を出したときに,羊土社の編集部の方から「先生,ところでO型の人は蚊に刺されやすいって聞いたことがあるんですけど,本当なんでしょうか?」と質問してくれました.今回はそれを調べてみました.
The Daughter from California Syndromeという概念があります.皆さんはこの疾患名を聞いて,どのような疾患を想像しますか?
雨の多い時期になりました.天気によって気分や体調が悪くなってしまう人もいるかと思います.今回は天気と関係の深い気圧が身体へ与える影響についてお話ししたいと思います.
救急をやっていますと,自殺を図って搬送される患者さんが多くおられます.特に春先には多く,これは新年度がはじまって環境や学校の変化が原因の1つかと思われます.
救命救急センターには,不幸にも交通事故に遭ってしまった方も多く運ばれて来ますが,いまだに飲酒や酒気帯び運転が原因となっていることも少なくありません.飲酒検問のときには,アルコール検知器が使われますが,全くアルコールを飲んでいないのに呼気からアルコールが検出される病気があります.
私は前の職場から岡山大学に異動するとき,大きな精神的ストレスに曝露され,円形脱毛症,いわゆる“10円ハゲ”になったことがあります.そのときには喘息のように呼吸器系にもいろんな症状が出てきて,自らの免疫力が精神的ストレスにより異常をきたすことを身をもって証明したわけです.
ポケモンGOは2016年7月にリリースされ,一時社会問題化しましたよね.これは,ポケモンのキャラクターを自ら歩いて集めてまわるゲームで,歩きスマホが問題になってきたのもこれがきっかけです.あれだけ騒がれたポケモン GOもいまやほとんど聞かれません.岡山大学病院にも「院内でポケモンGOは禁止です」という張り紙がなされていますが,そうでなくてもしている人はほとんどいません.
大学の教授という立場では,あまり自分の失敗談は話さない方がいいのかもしれませんが,私は学生さんや研修医に自分の恥ずかしい経験を話すことは最も大切と考えています.
市販の変声用のヘリウムガスのスプレー缶を見たことがあると思いますが,これを一気に吸い込んで話すと声が変わるので,余興などでよく使われます.
先日,「朝起きたらものが黄色く見えるんです」と驚いて救急車を呼んだ患者さんが来られました.救急隊はさまざまな病院に交渉したけれど,精神科をあたってくれ,などと散々断られたそうです.患者さんはバイタルサインも安定しており,精神的にも落ち着いた方で,頭部打撲などのエピソードはありませんでした.
医療機関はどこも医師不足ですが,特に救急の分野では顕著です.教授になってもこれほど夜勤や休日のシフトをこなさねばいけないとは思いませんでしたが,私はそれほど救急患者さんを診るのが嫌いなわけではないので,まだ週2回以上の夜勤をしています.
バンジージャンプはもともと南太平洋のバヌアツ共和国で,成人の通過儀礼として行われていたものです.男子が勇気ある成人男性となるために超えねばならない壁であったのですが,今では日本を含め世界各地で体験することができます.私は高所恐怖症ですし,学生のころデートで絶叫マシンに乗った後に嘔吐して振られて以来,絶叫系は控えています.
ジュースなどを飲んだ後,氷をバリバリかじる人がいます.氷を異常なほどに食べることは,氷食症(pagophagia)と呼ばれ,異食症(pica)の1つと考えられています.氷食症の定義はあいまいで,製氷皿1皿以上食べたり,強迫的異常行動としてみられる場合をそう呼ぶそうですが,氷食症は鉄欠乏性貧血の患者さんに比較的高い確率でみられる症状であることが知られています.
頭痛は,救急・総合診療でも多く遭遇する症候です.なかでも,発作性かつ拍動性に起こる片頭痛は,人口の約8%にみられるとされ,しばしば悪心・嘔吐を伴うこともあるため,日常生活に支障をきたし悩んでいる人が多い頭痛です.脳の器質的病変を伴わないことから,なかなか有効な治療法も確立されていません.この片頭痛と卵円孔開存に深い関係があるという研究結果が2014年に発表され,注目されています.
最近,メタノール(メチルアルコール)を飲んで中毒になり搬送されてくる患者さんが増えているのですが,楽に死ねる,とか,思いっきり酔える,などという誤った情報をインターネットから得ているケースが多いようです.
生活スタイルが変わってくると,これまでになかった疾患が生まれてきます.先日,任天堂からSwitchという新しいゲーム機が発売されましたが,テレビゲームが原因で起きる疾患もその1つです.アメリカでは,テレビゲームのことを「Nintendo」という通称で呼ぶ人が多く,その名前が疾患名としても使われています.
食べものによる窒息は救急外来でよく遭遇します.厚生労働省の報告によると,窒息の原因となる食べものはもちが最も多く,ついでパン,米飯と続くようです.一方,アメリカでは牛肉が最も多い原因で,食事が喉に詰まることを総称してsteakhouse syndromeと呼んでいます.
岡山大学病院救急科には「宏道おにいさん」と呼ばれている先生がいて,みんなから恐れられています.どうして恐れられているのかというと,「宏道おにいさん」が当直をすると,重症患者さんがたくさん搬入になり,とても忙しくなるからです.
口付け,いわゆるキスは欧米人に限らず,人類のほぼ90%にみられる行為といわれています.しかし,どうして人間はキスをするのか,この医学的意味についてはまだよくわかっていません. 最も古典的な説としては,鳥にみられるように食べ物を咀嚼して子どもに与えるという行為から派生し,文化として定着したといわれています.
以前,産業廃棄物処理施設で暴力団が出したゴミから猛毒のフッ化水素酸が見つかったと報道され,フッ素化合物が話題になったことがありました.
前回の「中華料理店症候群」に続いて今回も少し変わった名前の疾患をご紹介します.理容室ではシャンプーのとき顔面を下にした状態になりますが,美容院では仰向けになりますよね.この仰向けで首を反らす姿勢は意外と危険だというお話です.
食欲の秋ですね.ということで今回は「食」に関するお話をします.王将という中華料理の店があって,われわれもよくお世話になりますが,中華料理店症候群という,あまり有難くない名前の疾患があるのを知っていますか?
最近「ポケモンGO」というゲームアプリが日本でもダウンロードできるようになり,町のいたるところでスマートフォンを見ながら歩いている人を見かけます.ポケモンGOで事故が増えているというニュースもありますが,ポケモンは10年前,医学会,特に癌研究において大きな話題になったのです.
夏には海で怪我をしたり,魚やくらげに刺されたりした患者さんが救急外来にきます.海の生物による刺傷に対しては,酢,イチジクの汁,サボテン,尿,などこれまで多くの民間療法ともいうべき治療法の報告があります.しかし,海の生物による刺傷は比較的多いにもかかわらず,その正しい処置に関しては意外と知られていません.
冷たいものを食べると頭が“キーン”と痛くなることは皆さん経験したことがあるでしょう.これは,「アイスクリーム頭痛(Icecream headache)」として,正式な医学用語として認められている頭痛です.
臓器不全を補うのは理想的には再生医療や人工臓器ですが,まだまだ現実のものとなるには時間がかかりそうであり,臓器移植に頼らざるを得ないのが現状です.しかし,大きな問題はドナーの不足です.私が医学部の学生の頃,ドナー不足の苦肉の策で,生体ドナーからの移植が日本ではじめて行われ,議論になったことを覚えています.
人間は眼球を左右もっていますが,外傷などで片方の眼球が損傷すると,3〜4週間後に残った対側に,国家試験で覚えたフォークト・小柳・原田病に似たぶどう膜炎の症状が現れることがあります.これは,交感性眼炎としてよく知られた病態で,一方の眼球が穿孔性外傷を受け,ぶどう膜が損傷することにより,ぶどう膜色素(メラノサイト)に対して自己免疫機能が働くためと考えられています.
かつて日本がまだ戦争をしていたころ,病気になって徴兵を逃れようと醤油を大量に飲んだ人が多くいたそうです.醤油は今やsoy sauceとして世界中で手に入る調味料ですが,本当に醤油をたくさん飲むと病気になるのでしょうか?
僕が週1回当直している病院は,大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン®のそばにあることで,なかなかユニークな患者さんがこられます.昨年のハロウィン・ホラー・ナイトでは,ゾンビに扮したスタッフがお客さんに突き飛ばされ,肩関節脱臼で搬送されてきたのですが,肩を下げて痛そうに歩く姿はリアルに怖いものでした.
救急外来で心停止から少し時間が経過して発見された患者さんが運び込まれることがあります.気管挿管しようとしても顎がかたくなっているなど,いわゆる死後硬直が起きている場合には死後数時間は経過していると判断して,そのまま死亡確認をすることになります.
食べ物を床に落としたとき,「3秒以内(または5秒以内)なら大丈夫!」といって食べた経験はありませんか? アメリカでも“Five seconds rule!”と叫びながら,地面に落ちた食べ物を食べた友人がいて,これは世界共通の認識なのだと感動した記憶があります.しかし,本当に床や地面に落ちた食べ物を3秒や5秒以内に拾えば,衛生的に問題ないのでしょうか?
がんと放射線の関係は昔からいわれていますが,宇宙放射線に長時間曝露されるキャビンアテンダント(cabin attendant:以下CA)さんは乳がんが多いという都市伝説があります.今回はこれを検証してみましょう.
食事の後に急に走るなどの激しい運動をすると,左わき腹が痛くなる経験はみんなしたことがあると思います.急激な酸素の消費による横隔膜の虚血やけいれんによる痛みだという説もありますが,そうであれば左わき腹だけが痛くなる説明には説得力がありません.なぜ左わき腹痛が起こるのか,考えてみましょう.
アメリカでは11月の第4木曜日に感謝祭(Thanksgiving Day)を祝います.これは一大イベントで,イギリスからアメリカに移り住んだ人たちの最初の収穫を記念するものだそうです.この日には家族が集まり,中に詰め物をした七面鳥(Turkey)の丸焼きを食べるのが一般的です.感謝祭の日に,おなかいっぱい食事をしてソファーで眠る人をTurkey comaといい,七面鳥に含まれる眠気成分のためだといわれていますが,これは本当でしょうか?
先日,油井亀美也さんが国際宇宙ステーションに行かれましたよね.それにちなんで,今回は宇宙のお話をします.
夏になると怪談をよく耳にするようになります.なかでも「四谷怪談」は有名で,男女関係のもつれから,薬と偽って毒をもられたお岩さんが,容姿が醜く変貌してしまい,ショックのあまり死んでしまうお話です.このように容姿が変わってしまうような毒とは,一体なんだったのでしょう.現代医学ならお岩さんは助かっていたのでしょうか?
虫垂はそれ自体生理機能がなく,退化した痕跡の臓器といわれてきました.外科医はかつて虫垂を切除することにあまり抵抗を感じずに,開腹したついでに虫垂炎の予防のためといって異常のない虫垂を切除した例もあったそうです.ところが,最近,この虫垂の働きが意外にもとても重要であることがわかってきました.
私は以前,当直明けで富士山に登り,頭痛と吐き気でせっかくのご来光を気分よくみられなかった苦い思い出があります.高山病(減圧症)を身をもって体験した一人です.
私たちの腸管の中には,多くの種類の腸内細菌が存在しており,その絶妙なバランスにより,腸管の免疫系が適切に活性化されています.それには制御性T細胞やIgA抗体などさまざまなメカニズムがかかわっていることがわかっています.当然のことながら,正常な腸管内細菌叢が破壊されバランスが崩れると,さまざまな疾患の原因となってくるのはご存知のとおりです.
喫煙が健康に害になるというのは,いまや議論の余地もないでしょう.喫煙者は昨今非常に肩身が狭くなっていて,喫煙する場所をみつけるのにも苦労しているようです.ところが,多くの疫学調査により,喫煙によりParkinson病など神経変性疾患の症状が改善したり,発生率が減少したりすることが報告されているのです.
歓送迎会など宴会のシーズンです.お酒を飲んだあとには,〆のラーメンや雑炊が欲しくなりますよね.アルコールの利尿作用で塩分が不足し,塩気があるものを欲することは理解できますが,あれだけ飲んだり食べたりしたにもかかわらず,炭水化物が欲しくなるのはなぜでしょう?
織田信長の家臣であった羽柴秀吉は,播磨三木城や鳥取城を,兵糧攻めにより落城させたと伝えられています.ご存知のとおり,兵糧攻めとは,城を包囲し城内へ食料を持ち込ませないことで,城内にいる兵士や馬などを飢えさせる戦法で,直接武器を使うわけではないけれど,残酷な方法です.
グリーンランドには,イヌイットと呼ばれる氷雪地帯に住む民族がいます.昔から,イヌイットはケガをして出血したときに,血が止まりにくいといわれていました.研究者らはこれに注目し,1970年代にイヌイットと本土に住むデンマーク人とを比較した疫学調査を行いました.
ビリルビンは過度に血中に存在すると,血液脳関門を通って,大脳灰白質の大脳基底核に沈着し核黄疸という中枢神経系の異常を起こします.一方で,新生児には新生児黄疸という生理学的な黄疸があることは知っていると思いますが,なぜ新生児は強い毒性をもつビリルビンをわざわざ増やす必要があるのでしょうか?
経口血糖降下薬の1つに,ブドウ糖吸収を抑制するαグルコシダーゼ阻害薬(商品名:セイブル®,ベイスン®,グルコバイ®等)と呼ばれる薬品があります.糖質が吸収されるためにはデンプンのような多糖類から消化酵素の作用を得て二糖類(麦芽糖やショ糖),単糖類(ブドウ糖や果糖)に分解される必要がありますが,二糖類から単糖類へ分解するのがαグルコシダーゼという酵素です.
ハロウィンの時期になると,吸血鬼の格好をした人をよく見かけるようになりますね.吸血鬼はオオカミやコウモリと一緒に現れ,水やにんにく,日光や十字架を極度に恐がって,夜に凶暴になるとされています.これらの症状で何か思いつく病気がありませんか?
狭心症発作のときにニトログリセリンを使うことは,皆さん知っていると思います.このニトログリセリンは,ダイナマイトの原料でもありますが,火薬がなんで狭心症に使用されるようになったんでしょう?