冷たいものを食べると頭が“キーン”と痛くなることは皆さん経験したことがあるでしょう.これは,「アイスクリーム頭痛(Icecream headache)」として,正式な医学用語として認められている頭痛です.
このメカニズムは,実ははっきりとは解明されていないのですが,口腔内や咽頭の温度が急激に低下することに対する反射として,頭蓋内の血管が拡張して炎症を起こし,それによって頭痛を感じるという説があります.また,別の考え方も提唱されています.中咽頭に達した冷刺激は,三叉神経を介して脳幹の三叉神経核に伝達されますが,この三叉神経核は顔面や歯,頭の痛みに関係し,本来ならそれぞれの痛みが識別されて脳に伝わるはずです.ところが,急激な冷刺激によって一気に伝達物質が放出されると,これらの神経が混線を起こし,関連痛として頭痛を感じるという説です.関連痛説の方が広く信じられているようですが,どちらも正しいという認識でいいのだと思います.
このアイスクリーム頭痛は,頭痛の研究をしている人にとっては格好の研究対象で,比較的多くの論文が発表されています.台湾で約9千人の中学生を調べ,アイスクリーム頭痛は40%にみられ,女子より男子生徒に多く,片頭痛をもつ生徒に高頻度にみられたそうです1).同様にカナダでも145人の中学生に100 mLのアイスクリームを食べさせ,5秒以内で食べた群には27%に頭痛を認めたのに対し,ゆっくり食べた群では13%に頭痛を認めたと報告しています2).経験のとおり,急いで食べた方が頭痛は起こりやすいようです.
アイスクリーム頭痛は,群発頭痛をもつ患者に多くみられるという報告3)と,むしろ少ないとする報告4)があり,群発頭痛とのかかわりは明らかではありません.ですが,アイスクリーム頭痛が,片頭痛や群発頭痛などと共通のメカニズム,例えば痛み調節系の障害によるものだとすれば,これらの頭痛の解明のための研究モデルとして大変有用であることは間違いありません.
関西のテレビ番組で,「探偵!ナイトスクープ」という番組があるのですが,そのなかで,足湯をしながら冷たいものを食べると頭痛が起きないと言っていました.いくら調べても私の力ではその答えは見つかりませんでしたが,足湯をすることで痛覚の混線が起こらず,関連痛が起きなくなるのかもしれません.誰か教えてください.