子どもの頃,「みかんを食べ過ぎると黄色くなるよ」と親から注意され,そんな馬鹿なことがあるかと思っていましたが,実際に掌が黄色くなって驚いた覚えがあります.これは柑皮症と呼ばれ,文字通り柑橘類やカボチャ,ニンジンなどに多く含まれるβカロチンの血中濃度が上がったためにみられるものです1).一般的には血中βカロチン濃度が0.5 mg/dLを超えると症状が出ると言われていて,βカロチンは代謝されてビタミンAになります.
岡山大学病院の高度救命センターには小児科医かつ救急医の小児集中治療を専門とする先生が数人いますが,「黄疸があるから調べてくれ」と小児科開業医の先生から紹介された経験を全員がもっています.そのほとんどは,健康志向のあまり,親が野菜ジュースを大量に飲ませたことが原因です2).βカロチンは脂溶性なので脂質異常症で柑皮症が出やすいですし,肝障害や甲状腺機能低下ではβカロチンの代謝が遅くなるためこれまた柑皮症がみられやすくなります.最近は,ダイエット目的での海苔の大量摂取の例も報告されています.海苔もβカロチンを多く含みます3).
柑皮症と高ビリルビン血症の区別は眼球の白目をみればわかります.白目をみて黄染があれば高ビリルビン血症だと言えるのですが,これはビリルビンが眼球の強膜に多く含まれるエラスチンと親和性が高いためです.βカロチンは強膜には結合しません.
ちなみに,白目があるのは霊長類ではヒトだけだそうです.これは実は詳細な研究がなされていて,類人猿までは狩猟や身の安全のために視線が相手にわかるとまずいので白目がなく,ヒトにまで進化すると視線でコミュニケーションをとる必要がでてきたから白目が出てきたのだ,と説明されています4).「目は口ほどにものを言う」とは昔から言いますが,白目に意味があることをはじめて知りました.