私の血液型はA型なのですが,それを聞いた人はみんな驚きます.私の性格は典型的なA型ではないからだそうです.血液型を決定する抗原は血球だけではなく,臓器や毛髪にも分布しているため,もはや「血液型」という言葉そのものが適当ではないのかもしれません.そう考えてみると,血液型で性格がある程度決まる,という仮説は正しいような気もしますが,今のところ血液型の性格診断は根拠に乏しいとされています.血液型と疾患の研究は30年以上も前から行われており,血液型と関連する疾患について少しずつわかってきました1).なかでも,ABO型血液型で,O型の人は出血をしやすい,という話は有名です.
いくつか論文を紹介しますと,O型の人は深部静脈血栓の発生率が有意に低いことがわかっています2).また,胃炎や胃潰瘍で出血した患者さんの背景を調べてみると,O型の患者さんは他の血液型に比べて有意に出血のリスクが高いことが報告されています3).この原因については比較的明快な説明がなされていて,O型の人は健常者であっても,フォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor:vWF)のレベルが他の血液型に比べて25〜30%しかないことが指摘されています.vWFは血管内皮細胞および巨核球で産生され,血漿,血管内皮下組織および血小板に存在し,血管が損傷したときに動員され血小板の粘着や凝集に関与する,いわゆる「一次止血」の役目を果たします.また,vWFは凝固第Ⅷ因子のキャリアとしての働きもしますから,O型の人は他の血液型に比べて第Ⅷ因子活性も低下しています.
では,なぜO型ではvWFが少ないのかというと,これはよくわかっていません.いくつか仮説があり,O型の人ではvWFのクリアランスが速く,それはO型の人の血中に多いvWF分解酵素(別名:「ADAMTS13」)によって分解を受けやすいため,という説があるようです4).
最近,重症外傷の患者さん901人の分析から,O型の患者さんの死亡率が28%,その他の血液型は11%であることがわかりました5).外傷の死因はほぼ出血ですから,やはりO型の人は出血死しやすいことが推測されます.
※「第48回 O型の人は蚊に刺されやすいのか?」(レジデントノート2018年9月号掲載)もぜひご覧ください.