昔はなぜかおばあちゃんは手首に輪ゴムを巻いていました.最近では,若者たちもファッション目的で手首にミサンガを巻いたり,カラフルな輪ゴムを付けたりすることがあります.しかし,その輪ゴムがあまりになじんでしまって,巻いているのを忘れて皮膚の中に埋もれていき,何年も後になって手首の難治性の傷や瘻孔,手先の浮腫や筋力低下,神経麻痺,結合組織の炎症による骨浸食などが起きてようやく気づくことがあります.これは「Rubber Band Syndrome」として知られている病態で1〜3),犬や猫などのペットによくみられます.動物は毛で覆われているためわかりにくいことは想像できますが,人間が手首や指,足に巻いたゴムを忘れてしまうとはにわかには信じがたいことです.
もう1つのゴムの話として,消しゴムを鼻の穴に突っ込んだお子さんの報告があります.子どもは何でも穴に入れたがりますが,しばらく気づかれず,様子がおかしいため受診してCT検査を受けたところ,鼻の中に高輝度に写るものがあり,この子は最初は鼻石があると診断されました.結果,消しゴムであることがわかり,これは「消しゴム腫瘍(eraseroma)」と呼ばれているそうです4).
このように,ゴムはCTで石灰化や金属のようにハレーションをひくことなく,きれいに高輝度に写ることはあまり知られていません.輪ゴムなら高輝度の輪になります.例えば難治性の感染巣があれば異物を疑うことは大切ですが,その際にゴムはCTで均一で高輝度に写ることを知っておけば役に立ちます.また,われわれは,この性質を利用して,患者さんが痛いという場所に消しゴムを貼り付けてCTを撮ることがあります.そうすると,患者さんが痛みを感じている場所をCTで容易に確認することができて,病変の指摘がしやすくなるのです5).