爪楊枝は石器時代から使われていたらしく,人類は昔から歯に物が挟まることにとても不快に感じていたことが想像できます.先端が尖っていますし,口に入れて使うので危険なにおいがしますが,歯間ブラシが発達した今でも爪楊枝は全くすたれずに使われています.役者さんのキャラクターづくりに使われることもあり,それを真似しているのか,アメリカでは普段から爪楊枝を口にくわえている人を見かけました.
アメリカでのデータをみてみると,少し古い文献ですが1979年から1982年までの3年間で爪楊枝に関連した事故は8,176件も起きています1).多くは子どもで65歳以上の患者はわずか2%であったそうです.目の外傷など体表面の怪我が多いのですが,飲み込んでしまった例も多く報告されており,患者の多くは飲み込んだことを覚えていないため,実際にはもっと多くの事故が起きていると思われます.飲み込んだ例では消化管が破れて腹膜炎になる2)ことが多いのですが,食道から心臓に達し,心膜炎を起こしたり3,4)冠動脈を傷つけたり5)といった珍しいケースも報告されています.爪楊枝はX線で写りませんし,MRIでは無信号になるので間接的にはわかるかもしれませんが,総じてわずか14%しか診断されず,手術ではじめてわかる場合もあります.私も爪楊枝の誤飲の経験がありますが症状はなく,入院のうえ経過観察したところ,翌日におしりからそのまま出てきました.
ちなみに,韓国ではでん粉でつくられた爪楊枝がよく使われているようで,これを揚げて食べることがSNSで流行ったそうです.