特集にあたって 親愛なる研修医の皆さんへ 松本朋弘(練馬光が丘病院 総合救急診療科 総合診療部門) 1特集のねらい われわれの,医師としての毎日の任務は複雑で多忙なものです.病棟管理から診断,抗菌薬の選択,利尿薬の調整と,1日がはじまると多くの課題に直面します.そのなかで,栄養療法を考えるのはアセスメントの最後の方だと感じるかもしれません.しかし,患者さん本人のためになる行為の1つとして,栄養療法も抗菌薬選択などと同じく重要な位置を占めています. 病棟での管理に携わる研修医の皆さんは,栄養製剤の種類の豊富さや基礎疾患ごとの考え方の違い,カロリー計算といった栄養療法の複雑さに戸惑いを感じていることでしょう.それらすべてを完璧に把握することは難しいかもしれませんが,重要なポイントを押さえ,他科・他職種と協働すれば,栄養療法の問題も乗り越えることができます. この特集では,“初期研修医が栄養療法について学ぶ場合,最低限ここを押さえておくべき”という視点から情報を提供します. 2特集の流れ 本特集では,まず「栄養療法の前に患者のストーリーを把握しよう」(p.1170〜)というテーマからはじまります.続いて,「基本的な栄養投与方法決定についてのギモン」(p.1176〜)と「経腸栄養剤と食形態のギモン」(p.1185〜)について答えます.さらに,「リフィーディング症候群のギモン」(p.1195〜)について詳述します. その後,特定の疾患状況下での栄養管理について深堀りします.例えば,「敗血症で低栄養がある場合のギモン」(p.1203〜)や「糖尿病で低栄養がある場合のギモン」(p.1210〜),「血液透析患者の栄養療法のギモン」(p.1218〜),「慢性呼吸不全(COPD・心不全)患者における栄養療法のギモン」(p.1225〜)などです.また,「誤嚥性肺炎・嚥下障害がある患者の栄養療法の開始と継続のギモン」(p.1232〜)についても詳しく解説します. 最後に,「終末期の栄養療法と代理意思決定のギモン」(p.1239〜)について触れます.ここでは,われわれが患者さんとその家族と一緒に,終末期の栄養療法について考える際の重要なポイントを提供します. さらに,特別なコラムとして,「口を支える歯科医との上手な付き合い方」(p.1245〜)を掲載しています.このような幅広い視点から栄養療法を考えることで,より多面的なケアを実践する一助になればと考えています. 本特集が,皆さんの忙しい日々のなかで,患者さんの栄養状態を適切に評価し,必要な栄養療法を選択し,適切に施行するためのガイドとなることを願っています.患者さん本人のためになる行為の1つとして,栄養療法の重要性を再認識し,本特集を活用いただければ幸いです. 著者プロフィール 松本朋弘(Tomohiro Matsumoto) 練馬光が丘病院 総合救急診療科 総合診療部門 練馬区というフィールドで病院総合診療医と訪問診療医として働いています.Patient Journeyを守れる医療者を育てていきたいです.現在ケアマネージャーの実務研修中です.練馬区をより広く深く診ていきたいと思っています.YouTubeチャンネル「総合診療ブラザーズ」にて活動報告や,情報発信も続けています.ぜひチャンネル登録してみてください.