レジデントノート:もっと伝わる!症例プレゼン〜状況や相手のニーズに応じたショートプレゼン・コンサルトの技術
レジデントノート 2024年7月号 Vol.26 No.6

もっと伝わる!症例プレゼン

状況や相手のニーズに応じたショートプレゼン・コンサルトの技術

  • 石井潤貴/編
  • 2024年06月10日発行
  • B5判
  • 152ページ
  • ISBN 978-4-7581-2718-9
  • 定価:2,530円(本体2,300円+税)
  • 在庫:あり
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特集にあたって

特集にあたって

石井潤貴
(広島大学大学院 医系科学研究科 救急集中治療医学)

臨床現場で実感した「ショートプレゼン」の難しさ

皆様は医師になって一番驚いたことは何だったでしょうか? 私は間違いなく,「医師として人と話す,伝える機会は多く,難しい」ということでした.

学生のころ,私は幸いにも患者さん・ご家族との対話を比較的多く経験しました.5年生で出会ったコラムに書かれている「プレゼンは結論から」のパール1)も胸に,意気揚々と初期研修に臨みました.しかし当然ながら,4月に総合診療科に配属されたとき,その自信は打ち砕かれました.臨床現場では,これまでの小さな経験をはるかに超える「人と話す,伝える」技術が必要でした.「練習が必要」と上述のコラムで述べられていることも1),自分がコミュニケーションが苦手であることも忘れ,井の中の蛙になっていたことに気づかされました.

そのなかでも特に難しく感じたのが,患者さんについて医療スタッフに伝える「症例のショートプレゼンテーション(ショートプレゼン)」でした.上級医へ,他科の医師へ,病棟スタッフへ…伝える相手も,ショートプレゼンが求められる理由もさまざまで,何かプレゼンすると「何の相談でしたっけ?」「長い」「申し訳ないが,上級医に代わってくれる?」….失敗ばかりで,いつの間にか「プレゼンは結論から」というパールすら忘れ,さらにカオスに…という悪循環に陥りました.

あるとき当時の指導医から,「プレゼンは技術であって,疾患知識も必要だ.フィードバックするから,焦らず自分の型をつくってくり返し練習しよう」とコメントをもらいました.以後は自分の型をつくり,それに沿って練習することで,医師11年目に至った今もショートプレゼンを少しずつ改善しています.

プレゼンの重要性は何十年も変わっていない

私の現職場にある「診療20ヶ条」の第1条は「明確に話す,相手に伝える」です.これは,臨床におけるプレゼンの重要性と,そのポイントがもう何十年も変わっていないことを示唆します.一方,その割にショートプレゼンはいまだ口頭伝承で教えられている印象もあり,教えられ方もまちまち,そもそも教えを受ける機会のない先生もおられるようです.

羊土社編集部が行ったショートプレゼンについての研修医アンケートの内容を見ると,研修医の悩みは今でも私の経験とほぼ変わらないことに驚かされます().


本特集の目的と目標

研修医の皆様の声をもとに,ショートプレゼンにある程度の「型」を構築して出版することに少しでも意義があるならと願い,今回の企画を担当しました.

本特集の目的と目標は以下の通りです.

〈目的〉

ショートプレゼンで五里霧中になっている研修医の先生が,明日の臨床への1つのガイドを得る

〈目標〉

よくある3つのプレゼンの場面とそれぞれの「型」から,ショートプレゼンの要点を学ぶ

❶ 何かを依頼する:コンサルト時に収集すべき情報と取捨選択,プレゼンの組み立て方

❷ 情報共有 ❸ 緊急時:それぞれのショートプレゼンの型と実例

症例プレゼンの大原則」(p.993)では,すべてのショートプレゼンの基礎となるフルプレゼンテーションについて概説します.続いて,頻度の高い3つの「ショートプレゼンの場面」を紹介します.

❶ 何かを依頼する

❷ 情報共有をする

❸ 緊急時のコミュニケーション

そして,特に頻度の高い「❶ 何かを依頼する」について,研修医アンケートも参考に編者が構築した1つの「型」とその組み立て方を解説します.

その後 “Part 1〜3” では,それぞれを具体的に示します.まず「❶ Part 1:何かを依頼する」(p.1002〜)として各専門科へのコンサルトをとり上げ,すでに示した「型」に沿って模範例をご解説いただきます.またコンサルトを受ける側として研修医の先生へ伝えたいことをご紹介いただきます.さらに,「❷ Part 2:情報共有をする」(p.1054〜)として入院患者の定時プレゼン,「❸ Part 3:緊急時のコミュニケーション」(p.1062〜)として院内急変の場面を扱い,それぞれの型やコツ,模範例をご解説いただきます.

著者の先生方は,第一線で活躍する教育熱心な方ばかりです.ご多忙ななか,研修医のためならと全力で執筆くださいました.

また,本企画の礎となった私自身のショートプレゼンの型の構築に,知見を与えてくださった横林賢一先生(医療法人ほーむけあ ほーむけあクリニック),井藤英之先生(洛和会音羽病院),安倍俊行先生(医療法人安倍病院)にもこの場をお借りして感謝を申し上げます.

私の知る限り現時点でショートプレゼンにおける最適な型は明らかではなく,ここでお示しする型と異なる意見があって然るべきです.ぜひ皆様の型と比較していただき,それがよりよいプレゼンへ繋がればよいなと思います.

この特集でのアプローチ方法が正解とは限りませんが,本企画が私のように苦悩する先生方の一助になれば幸いです.

引用文献

著者プロフィール

石井潤貴(Junki Ishii)
広島大学大学院 医系科学研究科 救急集中治療医学
2014年 広島大学卒.2016年(株)麻生 飯塚病院で初期研修修了.2017年 同院総合診療科後期研修修了後,広島大学病院 救急集中治療科 医科診療医を経て現職.自分の生活を大切にしながら,臨床,研究,教育とわがままにやらせてもらっています.人材も機会も豊富な当科で学びたい方はぜひご連絡ください.

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もっと伝わる!症例プレゼン

状況や相手のニーズに応じたショートプレゼン・コンサルトの技術

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