特集にあたって 特集にあたって 東 美菜子(宮崎大学医学部病態解析医学講座 放射線医学分野) 1画像診断における主治医(臨床医)の役割 画像診断は,日常診療において非常に重要な役割を担っており,現在はほぼすべての診療科においてCT・MRIなどの種々のモダリティを用いた診療が行われています.画像診断にかかわる医師には,画像検査が必要と判断し検査を依頼する主治医(臨床医)と,主治医からの依頼に応じて検査を実施し診断を行う放射線科医がおり,画像診断においてこの両者は異なる役割をもちます.画像診断は放射線科医のみの仕事と考えている医学生・初期研修医に遭遇することがありますが,前述のように,主治医からの検査依頼があってはじめて放射線科医はその患者さんの画像診断に携わります.そのため,初期研修医も主治医として画像診断にかかわることになります. 主治医は,患者さんの病歴や身体所見,各種検査の結果から画像検査の必要性を検討しますが,必要性の判断,CT・MRIなどの種々のモダリティの選択の判断は,主治医がきちんとした根拠に基づいて行うべきであり,「念のため」「なんとなく」で画像検査を依頼するべきではありません.ここで必要になるのが画像診断に関する知識で,各病態・疾患の画像所見が各種モダリティでどのように示されるのかを知っていると,より適切なタイミングで適切な画像検査の依頼ができるようになりますし,各種画像検査の長所・短所や注意点を知っていると,検査による患者さんへの不利益の発生を予防もしくは最小限にすることができます.また,画像診断を実施する理由,画像診断によって明らかにしたいこと/除外したいことなど,検査の目的を文章にして放射線科医に伝えることも主治医の大事な業務ですが,この業務においても画像診断の知識は役に立ちます.放射線科医は依頼された検査ごとに,主治医が記載した検査目的のほか,カルテ上の臨床情報をもとに画像検査の最終的な可否の判断や内容決定を行いますので,適切な内容の画像検査を実施するためには主治医からの情報提供は重要です. 2本特集の目的と内容 頭部の画像診断は,症状のない方に対する検診や臨床上必要なスクリーニング検査,意識障害,痙攣,片麻痺などの神経学的な異常を示す患者さんに対する検査など,幅広い対象に行われています.頭部の画像診断におけるCTやMRIの役割は大きく,日常診療において目にする機会はとても多いと思います.一方,医学生や初期研修医にとっては苦手意識が強い領域でもあります.主治医として画像診断にかかわる際に必要な知識を身につけ,より有用な検査の実施と診断を行うことは,どの診療科の医師においても重要ですので,頭部画像診断の入門編として本特集を企画しました. 本特集では,現在第一線でご活躍されている先生方に,基本的事項を総論と各論に分けてわかりやすくご解説いただきました.総論「読影のキホン」では,CTやMRIの概要,さまざまな撮像方法,正常解剖や正常画像での見え方,見落としをしないための読影方法や読影の際の注意点など,頭部の画像診断をするうえで重要な基礎をご説明いただきました.異常を知るためにはまず正常を知ることが重要ですし,CTやMRIの特性を理解したうえで読影することでより正確な診断ができるものと思いますので,各論を読む前にぜひ目を通していただきたいと思います.各論「よく出合う症候・疾患の画像診断」では,ページ数に限りがあるので,日常診療でより遭遇する可能性の高い病態・疾患の領域として,出血,梗塞,外傷,感染症,代謝・栄養・中毒性疾患に絞り,基本的な事項をそれぞれわかりやすく解説いただきました.各病態・疾患の異常所見を学んで正確な画像診断を行うための知識を得るだけでなく,どのような撮像法が異常を検出しやすいのかを理解することで,より有用な検査依頼を記載することに役立つものと思います. 医学生・初期研修医の皆さんに,少しでも頭部領域の画像診断に対し興味と自信をもっていただければ幸いです. 著者プロフィール 東 美菜子(Minako Azuma) 宮崎大学医学部病態解析医学講座 放射線医学分野 画像診断は,主治医と放射線科医が協力して適切に安全に実施されるべきものと考えております.本特集が,各画像の特性の理解を深め,正しい検査法の選択をする手助けになれば嬉しいです.