レジデントノート:おまかせください!救急での創処置〜創の洗浄から縫合の実際、アフターケアまで、ひとりで創傷に対応するための知識&スキル
レジデントノート 2024年9月号 Vol.26 No.9

おまかせください!救急での創処置

創の洗浄から縫合の実際、アフターケアまで、ひとりで創傷に対応するための知識&スキル

  • 片桐 欧/編
  • 2024年08月09日発行
  • B5判
  • 146ページ
  • ISBN 978-4-7581-2721-9
  • 定価:2,530円(本体2,300円+税)
  • 在庫:予約受付中
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特集にあたって

特集にあたって

片桐 欧
(飯塚病院 救急科 医長)

 ガラパゴス化している「創処置」の現状

“ガラパゴス” と聞くと,太平洋上に浮かぶエクアドル領のガラパゴス諸島を思い浮かべますが,日本独自の文化も “ガラパゴス” と呼ばれることがあります.これは日本が島国で,ハイコンテクストな文化であるために,サービスや製品が独自に最適化する傾向があることが理由にあげられます.これは医療においても同様で,世界的なスタンダードがない,もしくは浸透していない領域においては,病院独自の文化によってガラパゴス化が進んでおり,「創処置」はその最たる例であると思います.

非医療従事者の方であれば「創処置」といえば外科の分野と考えると思いますが,実際は初期研修医にとって突破すべき関門の1つであり,非専門科である内科医も多く経験する処置となります.救急外来にて出くわす頻度も高く,米国の救急外来では,末梢静脈路確保に次いで多い処置とされています1).そして,救急医に関する訴訟では創傷に関するものが最も多いという報告もあるため2),より一層対応には注意をしていかなければなりません.創処置に関して国際的に標準となるガイドラインなどがあればよいですが,エビデンスとして広く認知されているものがないのが現状です.そのようななかで,初期研修医は救急外来での初療を任されることも多く,創処置は手がかかるために単独で処置をすることも少なくありません.処置室など閉鎖的な空間で処置をするといった特性からも,上級医になかなか相談ができず,耳学問で得た知識や,一緒に対応にあたる看護師の助言などに頼って処置をするケースも多くあるのではないでしょうか.

私自身,後期研修医の時期は総合診療科で働いていたため,創処置が必要な場面では初期研修時代に得た知識のまま対応を行っており,知識も耳学問で得たものがほとんどでした.内科医として働いていたときには,創処置のエビデンスをあまりもち合わせていないどころか,そもそも重視をしていなかったように思います.その後,救急科へ転科したことで,創処置に関して研修医から相談をされる立場となったため,改めて自分で勉強をし直し,内科医や初期研修医がどういった点で創処置に対し疑問を思うのか,また創処置にはどのようなエビデンスがあるのかということに対して向き合うことができました.

 本特集の特長

本特集においては,救急外来で行われる創処置のなかでスタンダードなものを提示し,研修医の先生方が1人で対応をするときの不安がなるべく軽減できるように,また悩みやすいポイントをまとめるというコンセプトで企画させていただきました.まず,総論として創傷の評価や,実際に処置をはじめる前の下準備について,そして各論としては切創や縫えない傷,特殊な創傷について具体例を用いながら解説をしていただき,さらに予防的抗菌薬やホームケア,抜糸などに関しても解説していただきました.もちろん,病院ごとに処置の方法が違うことは往々にしてあるため,本特集に記載されている知識だけを鵜呑みにせず,病院ごとの決まりも確認をしながら,臨床で活かしていただければと思います.本特集が1人でも多くの先生の創処置の一助になれば幸いです.

引用文献

  • Pitts SR, et al:National Hospital Ambulatory Medical Care Survey:2006 emergency department summary. Natl Health Stat Report:1-38, 2008(PMID:18958996)
  • Karcz A, et al:Malpractice claims against emergency physicians in Massachusetts:1975-1993. Am J Emerg Med, 14:341-345, 1996(PMID:8768150)

著者プロフィール

片桐 欧(Oh Katagiri)
飯塚病院 救急科 医長
救急科専門医・総合内科専門医
2014年 帝京大学卒,2016年 湘南鎌倉総合病院で初期臨床研修修了,2019年 飯塚病院総合診療科後期研修修了,同年より飯塚病院救急科へ転科し現職.
内科救急を実践しながら,日々研修医教育をしています.将来は離島での地域医療へ従事したいと考えており,そのために日々トレーニングをしています.内科救急を学びたい方や,僻地・離島での診療のトレーニングを行いたい方はぜひ一度見学に来てください!

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