病歴からは,気管支喘息発作を疑いますが,胸部X線では粒状影がみられます.感染症の可能性もあるでしょうか.
胸部CTでは,気管支壁肥厚(図2➡)や気道散布性の粒状影(図2◯)を認めた.これは,末梢気管支の閉塞が起こり,細気管支炎様の変化を呈しているものと考えられる.マイコプラズマ肺炎,百日咳,肺結核,ウイルス性細気管支炎等の感染性疾患も鑑別疾患としてあげたが,各種検査(マイコプラズマLAMP法,百日咳抗体,インターフェロンγ遊離試験,SARS-CoV-2/インフルエンザ抗原検査,喀痰培養)を行い,いずれも否定的であった.病歴から,喘息発作として入院のうえ,全身性ステロイドの内服とSABAの吸入を行ったところ,自覚症状や胸部聴診所見が著明に改善した.さらに,病状改善後,初診時の胸部X線でみられた粒状影は改善し(図3),胸部CTでも,気管支壁肥厚や小粒状影は改善した(図4).喘息は時にこのような所見がみられることがある.
本症例の気管支壁は,病状改善後も,非喘息患者の気管支壁(図4➡)と比べると肥厚した状態である(図4➡).これは,持続する気道炎症により,気道の構造変化(リモデリング)が進行し,非可逆的な気流制限を起こしている所見である.この患者は,喘息発作をくり返していたにもかかわらず,吸入ステロイド(ICS)を主体とした治療介入がされず,喫煙も続けていたことから,気道炎症が持続し,気道リモデリングが引き起こされたと考えられる.禁煙を指導したうえで,発作治療後に高用量ICS/長時間作用性β2刺激薬(LABA)/長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の3剤併用吸入療法とロイコトリエン受容体拮抗薬の内服を開始した.しかし,退院後,軽度の発作を起こしたため,難治性喘息患者に対しての有用性が示されている抗TSLP抗体(テゼペルマブ)2)を併用し,以降は良好にコントロールされている.
このように,気道リモデリングは喘息難治化の原因となる1)ため,早期に適切な治療を行う必要がある.喘息発作は,救急外来でしばしば遭遇する疾患であり,その意味で救急外来は,コントロール不良の喘息患者を適切な治療につなぐチャンスともいえる.残念ながら,喘息発作を過少評価した対応がしばしば見受けられるが,読者の皆さんには,普段の喘息治療が適切になされているかも含めたマネジメントをお願いしたい.