レジデントノートインタビューコーナー『あの先生に会いたい!』では,さまざまなフィールドでご活躍中の先生に,医師として歩んでこられた道のりや,現在,そして将来のこと,さらに私生活とのバランスの取り方などについて語っていただきます.また番外編では,本誌に収まりきらなかった内容をホームページ限定で紹介していきます.
下井辰徳先生(以下敬称略):先生は,沖縄県立中部病院や聖路加国際病院で臨床研究を研修医にもご指導されていましたが,研修医も,忙しい臨床の中でもテーマを見出して研究するのはやはり大切とお考えなのですね.
徳田安春先生(以下敬称略):臨床研究をやると,普段の臨床がさらに深みを増す感じがします.例えば,心内膜炎は重要な病気ですが,そんなに数多くは経験しませんよね.1人の研修医が,2年間のうち2,3例ぐらい経験する程度かもしれません.
けれども,もし心内膜炎の臨床研究をやると,その病院の心内膜炎症例を過去全例(たとえば100例程度)調べるわけです.カルテを全部レビューして,どんな病歴だったか,どんなフィジカルだったか,どんな検査所見だったかを全部調べて分析する.その作業をやるうちに,かなりの勉強になります.結局,心内膜炎を100例診たのと同じになりますから,自分自身で実際に経験した症例が,2,3例でも,その100例分の勉強をして,心内膜炎に関しては,誰よりもよく知っているっていうことになりますよね.
下井:確かに,実際に心内膜炎だけで100例は経験できないです.
徳田:さらにいうと,発表するときに過去の文献や最新の治験も全部調べるので,それに関しては,一番知ってるといえるほど勉強しますよね.
臨床研究を研修医がやるというのは,非常に重要です.1つ1つの病気でも,さまざまな病歴のパターン,フィジカルのパターンがあることや,感度・特異度の解釈のしかたもわかりますから.
病気という切り口以外にも,主訴とか,いろいろな切り口があります.例えば,「呼吸困難」で研究するとしたら,肺の病気かもしれませんし,心臓の病気かもしれませんし,あるいは,パニック症候群みたいな,精神科的な疾患かもしれませんし,いろいろな病気があります.それを全部調べると,呼吸困難の患者さんが救急室に来て呼ばれたときに,自信を持って診察できるんですね.臨床研究で呼吸困難の患者500例のカルテを全部調べたから,“呼吸困難は,だいたい何パーセントがこれで,こういうパターンのときは心不全”というのが,頭のなかに入っているわけですよ.その研修医はね.
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