レジデントノートインタビューコーナー『あの先生に会いたい!』では,さまざまなフィールドでご活躍中の先生に,医師として歩んでこられた道のりや,現在,そして将来のこと,さらに私生活とのバランスの取り方などについて語っていただきます.また番外編では,本誌に収まりきらなかった内容をホームページ限定で紹介していきます.
下井辰徳先生(以下敬称略):批判的吟味の上手なやり方について教えて下さい.
徳田安春先生(以下敬称略):批判的吟味の勉強の仕方ですが,実は,個人個人で勉強会をやったり,グループでもジャーナルクラブとして楽しく続けるのは,なかなか大変ですよね.
5年くらい前に,台湾で国際内科学会が開かれたときに,EBMコンテストというのがありました.そのコンテストにヨーロッパから1人,日本から1人という形で審査員として呼ばれたんです.
下井:日本からも出ていましたね.
徳田:はい.そのときは日本から3チーム出ました.優勝はできなかったんですが,かなり刺激を受けてとても楽しくやっていました.
内容は,1セッションは3時間で,最初の2時間は1つのケースについて批判的吟味をして,残りの1時間でスライドをつくって,最後,10分間プレゼンテーションを英語でする.それを,各国の代表チームがやります.
各チームが取り組むケースは同じものですが,ケースは複雑なもので簡単に分からないシナリオが出されるのです.答え自体があっているかの評価はもちろん,プレゼンテーションも評価されて優勝チームを決めます.
ワールドカップサッカーみたいなもので,国の威信がかかってますから,普段あまりやらないEBMという批判的吟味もかなり一生懸命やっていました.日本人もよく健闘しましたけど,アジア各国は,世界的にもレベルが高いんですよ.
下井:国の代表となると負けられないですね.
徳田:そうですね.2回目のEBMコンテストで聖路加国際病院からチームを送り込んだときは準優勝でしたが、準優勝で帰ってきた3人のメンバーが半年後私のところに来て,“EBMについてもっと詳しく勉強したいから教えてくれ”っていったんです.それまでEBMに興味なかった人たちが,EBMコンテストを体験したら,目つきが変わっていました.準優勝しましたけど,優勝を逃していますから敗北感があるのでしょうね.もっと勉強しなきゃいけないなというのがあったんだと思います.
下井:教えてくれる先生がいるとさらに成長できそうです.
徳田:実は,私の目標ですが,数年以内にEBMコンテストの世界大会を日本でやりたいと思っているんです.
まず,日本で,EBMコンテストの大会を開いて,日本から代表チームを3チームぐらい選ぶ.そしてアジア大会を開いて,世界大会を開く.アジア大会を開くときは,中国,韓国,台湾,マレーシア,シンガポール,などの代表チームの参加を募るんです.アジア大会の上位のチームには,今度,アメリカとヨーロッパに参加させるような形で世界大会を開催する.そういうのができたら,面白いですよね.
下井:面白そうですね.
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