レジデントノートインタビューコーナー『あの先生に会いたい!』では,さまざまなフィールドでご活躍中の先生に,医師として歩んでこられた道のりや,現在,そして将来のこと,さらに私生活とのバランスの取り方などについて語っていただきます.また番外編では,本誌に収まりきらなかった内容をホームページ限定で紹介していきます.
安藤先生(以下敬称略):アメリカでの総合診療の研修はどんなものでしたか.
山中先生(以下敬称略):私はほかの先生方のようにアメリカの医師免許をもっていませんので,研修は見学程度のものでした.ただ,アメリカでは私をすごく温かく迎えてくれて,内科チームに入れてくれたんです.内科チームというのは医学部の5年生,6年生,研修医の1年次,2年次の大体4人で構成されて,そこに薬剤師が入ったり,私のようなビジティング・フィジシャンという見学のドクターが入ったりします.そのチームが4日に1度,24時間の当直,すなわちこの日に入院するすべての患者さんの主治医になります.
安藤:チームがそのまま全員で当直するようなかたちですか.
山中:そうなんです.チーム全体が,朝から翌朝まで当直するんです.その間に平均5人ほど患者さんが入院するのですが,すべて自分たちで診ます.
安藤:どんな疾患でも診る,ということですか.
山中:そうです.私は,UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)で,ティアニー先生(Lawrence Tierney)のもとで研修しましたが,そのときは,白血病や急性心筋梗塞のようにきわめて高度の専門知識や技術が要るものは専門医が診るのですが,それ以外はすべて診ました.こんなスタイルもあるのか,と思いましたね.
安藤:アメリカと日本の臨床に違いを感じられたことはありますか.
山中:すごくありました.アメリカのドクターは病歴聴取と身体診察をとても重視します.これには驚きました.日本では,病歴聴取と身体診察は省略して,検査を重要視する風潮はその頃からありました.また,アメリカの総合診療医は内科全体の知識がすごく,あらゆる分野をとても深く知っていることにも驚きました.私はそのとき日本で10数年医師としてやっていて,自分の専門である血液内科とHIVに関しては知識はあったのですが,呼吸器や循環器,神経内科などほかの分野は,ほとんど研修医レベルの知識しかありませんでした.症例カンファレンスで話されるさまざまな内科疾患は私には全く知識のないことでしたから,非常に大きな差を感じました.
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