第7回 ブログをはじめるにあたって
検索される自分:発信力(2008年7月号)のOnline Supplement Material
本誌連載第7回では,「検索される自分:発信力」として,現代における研究者の名刺としての「ブログ」の効用についてご紹介いただきました.
今回のOnline Supplement Materialでは,いざ自分がブログをはじめるにあたって,ちょっと気になる「実名/匿名」の問題と,島岡先生が推薦される10のブログをご紹介いただきます.(編集部)
実名か匿名か?
ブログをはじめるにあたって実名を使うか,ペンネーム/ハンドルネーム等の匿名を使うかは切実な問題である.結論から先に言えば,どちらでもかまわない.実名の方がネットとリアルとをストレートに結びつけることができ,ネット上で形成した「個の信用創造装置」をリアルの世界で生かすことが簡単にできる.しかし,いきなり実名でブログをはじめるのは恥ずかしい・敷居が高いと感じられる場合には匿名ではじめてもよい.まずはじめてみることの方が重要であると考える.
米国では実名でブログを書くブロガーが日本にくらべて圧倒的に多いと思う.これは文化的な違いもあり,一概にどちらが良い悪いの問題ではない.掲示板などと違いブログの場合には匿名であっても,(変更可能ではあるにせよ)ブログのURLというIDがあり,匿名性が直ちに言説の信頼性を低下させるわけではないと考える.ただ,長期間ブログを続ければ記事の内容からある程度自分のアイデンティティーはばれてくる.したがって,匿名ではじめてもいつかは実名を公開するつもりで書いた方がよいであろう.
他人のブログに学ぶ
他のブロガーの書いたブログをRSSフィードを使って定期的に読んでいくことは,普段は出会うことのないタイプの人の考えをリアルタイムで学ぶことを可能にする知的生産術の1つである.私が推薦する理系研究者自己啓発のための10個のブログを紹介する.
(編集部注 2017年12月現在、当初と同じURLで継続しているブログのみリンクしています)
- 5号館のつぶやき
- 北海道大学stochinai氏による,サイエンス,サイエンスコミュニケーション,ポスドク問題などに関連した時事問題を紹介するブログ.非常に多くのコメントが付くことで有名
- 生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ
- 京都大学/沖縄科学技術研究基盤整備機構の柳田充弘氏によるブログ「柳田充弘の休息時間」の続編.科学政策に対する辛口の論評は非常に興味深い
- 404 Blog Not Found
- オープンソースプログラマー/カリスマブロガー小飼弾氏による辛口で切れ味のよい書評と社会評論で有名なブログ
- My Life Between Silicon Valley and Japan
- IT企業経営コンサルタントで著書「ウェブ進化論」等で知られる梅田望夫氏のウェブ時代を生きる抜くための新しいオプティミズムを提唱する強烈にポジティブなメッセージを放つブログ
- レジデント初期研修用資料
- 医師medtoolz氏によるさまざまな医療問題,特に現代の医療システムと医師の労働問題の核心をとらえたブログ.抑えたトーンの味のある文章が印象的
- 分裂勘違い君劇場
- fromdusktildawn氏による「極論を楽しみ」ながら仕事,キャリア,生き方などに独特で鋭い論評を見せるブログ
- シゴタノ!
- 仕事を楽しくするための創意工夫(ライフハック等)を紹介するブログ
- idea*idea
- クリエイティビティーを向上させるためのさまざまなアイデアを紹介している「毎日の発想刺激剤」ブログ
- ScienceBlogs
- ライフサイエンスから科学教育や科学政策までサイエンスに関する70余りのブログを集めたポータルサイト;さまざまな広い分野のサイエンスに関する情報を収集するのに便利
- Seth Godin's Blog
- 本誌連載「プロフェッショナル根性論」でも何回か引用したカリスママーケッター,セス・ゴーディンによる,現代に生き抜くための仕事のマインドセットとマーケティング戦略を綴ったブログ
【編集部注】
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RSSフィード
- ウェブサイトが更新情報などをRSS形式のデータを提供すること.RSS形式にはサイト 内の新着記事・記事の更新日・本文の要約などが含まれる.RSSを読込む専用のソフト「RSSリーダー」もあるが,最新のブラウザInternet Explorer7,FireFox3,Safari3などにも同様の機能が付属している.RSSについては@ITの記事「Web更新情報が手軽にとれるRSS 」など,WEB上の記事もご参照ください
プロフェッショナル根性論 目次
- 第1回 強みとは (2017/10/31公開)
- 第2回 自分のキャパシティーを見極める (2017/11/07公開)
- 第3回 変化を促進する米国流研究システム (2017/11/14公開)
- 第4回 科学の世界に物語力は必要か? (2017/11/21公開)
- 第5回 フィードバックがもたらす利益と損失 (2017/11/28公開)
- 第6回 人生のプライオリティーを決める (2017/12/05公開)
- 第7回 ブログをはじめるにあたって (2017/12/12公開)
- 第8回 耳から入る洋書読破術 (2017/12/19公開)
- 第9回 心に残るプレゼンテーション (2017/12/26公開)
- 第10回 創造性とは (2018/01/09公開)
本連載を元に,『やるべきことが見えてくる研究者の仕事術』が単行本化されています.もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください.
著者プロフィール
島岡 要(Motomu Shimaoka)
大阪大学卒業後10年余り麻酔・集中治療部医師として敗血症の治療に従事.Harvard大学への留学を期に,非常に迷った末に臨床医より基礎研究者に転身.Mid-life Crisisと厄年の影響をうけて,Harvard Extension Schoolで研究者のキャリアパスについて学ぶ.現在はPIとしてNIHよりグラントを得て独立したラボを運営する.専門は細胞接着と炎症.(執筆時のプロフィールとなります.)
ブログ:「ハーバード大学医学部留学・独立日記」A Roadmap to Professional Scientist