スマホで読める実験医学
550円

母性エピゲノムの確立と伝承

Establishment and inheritance of the maternal epigenome
井上 梓
Azusa Inoue:RIKEN Integrative Medical Sciences(理化学研究所生命医科学研究センター)
10.18958/6757-00001-0000709-00

配偶子のエピゲノムが次世代の胚へと伝承されるには,受精後に起こる大規模なリプログラミングを乗り越える必要がある.このようなエピゲノム修飾として唯一知られていたのが,インプリンティング(遺伝子刷り込み)制御領域などのDNAメチル化修飾である.近年われわれは,卵のヒストン修飾の一部が着床前発生を通じて維持されて,DNAメチル化非依存的にアレル特異的な遺伝子発現(インプリント発現)を制御することを見出した.この非典型なインプリンティングは,着床後にも胎盤などの胚体外組織において維持される.その制御機構の理解が進むにつれて,ヒストン修飾が母性伝承されることの意義もわかりはじめた.本稿では,マウスの卵における母性エピゲノムの確立機構と受精後の維持機構およびその機能について最新の知見を紹介する.

卵母細胞,H3K27me3,DNAメチル化,インプリンティング,X染色体不活性化

この記事は有料記事です

(残り約8,800文字)

  • 【スマホで読める実験医学】母性エピゲノムの確立と伝承
    550円