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がん微小環境における腸内細菌叢代謝物質の役割

The role of gut microbial metabolites and components in cancer
大谷直子
Naoko Ohtani:Department of Pathophysiology, Osaka City University Graduate School of Medicine(大阪市立大学大学院医学研究科分子生体医学講座病態生理学)
10.18958/6845-00001-0000762-00

私たちヒト(宿主)の腸内には500~1,000種類くらいの腸内細菌種が存在しており,さまざまな腸内細菌代謝物質を産生している.そしてその代謝物質や菌の構成成分は,直接腸上皮に作用するほか,それらの大部分が腸から吸収され,門脈等を介して肝臓に流れ込んでいくため,肝臓は腸内細菌代謝物質の影響を受けやすい臓器である.代謝物質は肝臓でさらに修飾を受けて無毒化され,全身循環へ流れ込んでいく1).このように腸内細菌叢による代謝物質は全身の恒常性維持に重要であり,腸内細菌叢が「もう一つの臓器」と言われている所以である2).他方で,これらの代謝物質が疾患発症に寄与する事例も明らかになってきた.本稿では,特にがんにかかわる腸内細菌代謝物質について,最近の知見を含め概説する.

腸内細菌代謝物,胆汁酸,短鎖脂肪酸,細胞老化随伴分泌現象(SASP),がん微小環境

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