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アスベスト・繊維性ナノ物質による発がんメカニズム:なぜ特定の鉱物はヒトにがんを発生させるのか?

Carcinogenic mechanisms by asbestos and fibrous nanomaterials: Why are certain fibrous minerals carcinogenic to humans?
豊國伸哉
Shinya Toyokuni:Department of Pathology and Biological Responses, Nagoya University Graduate School of Medicine(名古屋大学大学院医学系研究科病理病態学講座生体反応病理学)
10.18958/6619-00001-0000940-00

経済優先の社会が構築され,多くの新規マテリアルが発見・開発されてきた.そのなかにはアスベストのように予想外にがんを引き起こすものもあった.繊維性鉱物がなぜヒトに悪性中皮腫を引き起こすのかは長年の謎であったが,その分子メカニズムが明らかになってきた.長さ・直径などの物理的因子,生体内非分解性に加えてヘモグロビン・ヒストンをはじめとする特異的タンパク質の吸着,さらに中皮細胞の貪食性が重要であることが判明した.過剰鉄環境下でフェロトーシス抵抗性が獲得されたのである.同様の現象は直径が50 nmの多層カーボンナノチューブでも報告された.感染症が克服され寿命が延びた今,環境因子の重要性が再認識される.

アスベスト,カーボンナノチューブ,鉄,フェロトーシス

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