実験医学増刊 Vol.22 No.8

血管研究の最先端と治療への展開

血管新生・血管病態の分子メカニズムから現実となった新時代の臨床応用まで

  • 渋谷正史,江頭健輔,室原豊明/編
  • 2004年05月20日発行
  • B5判
  • 202ページ
  • ISBN 978-4-89706-103-0
  • 5,940(本体5,400円+税)
  • 在庫:なし
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血管研究は,癌や糖尿病のみならず動脈硬化症やリウマチ関節など多くの疾患に深くかかわる分野である.この分野は近年大きく進歩し,血管新生の分子メカニズムや治療への応用に関する研究は世界的規模で行われる時代となっている.血管系の新生・維持,およびその退縮にはさまざまな因子が関与することが明らかとなり,これを応用した治療は実際に効果をあげはじめている.本書では,血管研究がどこまで進み,どのように治療へ応用されているのかを,第一線の研究者があますところなく解説する.

目次

第1章 血管発生・新生のメカニズム

概論:新しい段階に入った血管新生研究【渋谷正史】

  • 胎生期における血管系・リンパ管の形成
  • 病的血管の特徴
  • VEGFとその受容体システムは,血管・造血発生のみならず病的血管新生を規定する
  • エフリンB2-EphB4受容体システムは動・静脈の分化を制御する
  • アンジオポエチン-Tieシステムは血管内皮と平滑筋細胞の相互作用に関与する
  • インテグリン系とシェアストレスも重要な制御系である
  • 血管新生の抑制にかかわるおもな遺伝子群

1. 血管・リンパ管系の発生【中屋百合恵,久保 肇】

  • 胎仔期の血管・リンパ管形成と造血
  • 血管と造血の分岐点:ヘマンジオブラスト
  • 動脈と静脈の内皮細胞の分化と発生
  • リンパ管内皮細胞の発生と分化
  • ES細胞からのリンパ管内皮細胞分化
  • その他のリンパ管発生にかかわる分子

2. 血管内皮増殖因子VEGFの作用機構【渋谷正史】

  • VEGFファミリーの構造と性質
  • VEGF-Aに関する最近の話題
  • VEGF受容体(Fltチロシンキナーゼ群)
  • VEGF受容体に関する最近の話題
  • VEGF-VEGFRシステムに対する阻害剤の開発,および再生医学への応用

3. アンジオポエチンによる血管新生の制御【高倉伸幸】

  • AngとTIE2受容体
  • Angによる血管構造の安定化,不安定化
  • TIE2と血管透過性

4. 血管内皮細胞に発現し,血管新生を調節する新規分子【佐藤靖史】

  • マウスES細胞を研究に用いる
  • 血管内皮細胞が発現する新規機能性分子を単離・同定するためのもう1つの試み:cDNAマイクロアレイ法
  • 血管新生抑制因子の現状

5. 大血管の発生と神経堤細胞【栗原裕基】

  • 大血管の進化と形態形成
  • 神経堤細胞の発生
  • 神経堤細胞の遊走と分化
  • 神経堤細胞の分化決定のメカニズム
  • 大血管形成と神経堤細胞
  • エンドセリンと心臓神経堤細胞

6. 血管内皮前駆細胞の基礎と応用【堀井美希,浅原孝之】

  • 血管内皮前駆細胞からみた血管形成
  • 血管内皮前駆細胞とは
  • 血管内皮前駆細胞の臨床応用

7. 細胞運動の調節と血管〜WAVE2を中心に【山崎大輔,末次志郎,竹縄忠臣】

  • 細胞運動
  • 血管形成におけるWAVE2の役割

8. 血管新生におけるマトリックスメタロプロテアーゼの役割【梁 幾勇,越川直彦,清木元治】

  • MMPとは
  • 血管新生におけるMMPの役割

9. マトリックスメタロプロテアーゼ制御因子RECKと血管リモデリング【高橋智聡】

  • MMPノックアウトマウス
  • 血管平滑筋のMMPと病的血管リモデリング
  • RECKノックアウトマウス
  • RECKと病的血管リモデリング

第2章 血管病態の分子メカニズム

概論:血管医学の新展開〜ニューパラダイムの構築から治療開発へ【江頭健輔】

  • 血管に視点をおいた「血管医学」の重要性
  • 血管病を治療する対策の創製
  • 血管医学からの生命科学の開拓と臨床医学への還元

1. 動脈硬化・再狭窄の機序におけるMCP-1の役割〜炎症仮説の証明【北本史朗,江頭健輔】

  • MCP-1と動脈硬化
  • MCP-1と再狭窄
  • 7ND遺伝子治療法の安全性の検討

2. 動脈硬化病変におけるVEGF研究の新展開〜血管保護か血管病促進か?【大谷規彰,日浅謙一,江頭健輔】

  • VEGFとその受容体
  • VEGFとその受容体の胎生期における役割
  • 出生後のVEGFとその受容体の役割
  • VEGFと動脈硬化
  • 血管内皮傷害とVEGF

3. FGF-2による血管新生因子群の階層的発現制御機構〜機能をもつ血管の再生システム【藤井孝明,米満吉和】

  • 「機能的」血管新生と「病的」血管新生
  • 生体内における機能的血管新生過程の階層的制御
  • 「総合的」血管新生療法の提唱

4. 動脈硬化の進展と破綻における細胞死の役割【市来俊弘】

  • 動脈硬化病変におけるアポトーシス
  • 血管傷害とアポトーシス
  • 血管壁細胞におけるアポトーシス
  • 細胞死のシグナル伝達
  • 動脈硬化に関連したアポトーシス促進因子と抑制因子
  • アポトーシスを制御する転写因子

5. 高血圧性心血管リモデリングと炎症〜反応性心筋線維化と拡張能障害【甲斐久史】

  • 高血圧性心疾患における拡張能障害
  • 高血圧性心血管リモデリング
  • 拡張能障害を呈する高血圧性肥大心モデル
  • 圧負荷による心血管周囲炎症性反応の活性化
  • 圧負荷による心血管周囲炎症活性化のメカニズム

6. 酸化LDLと酸化LDL受容体【久米典昭】

  • 酸化LDLと粥状動脈硬化プラークの破綻
  • 酸化LDL受容体
  • 酸化LDL受容体LOX-1
  • 酸化LDL受容体SR-PSOX

7. 血管の発生と分化〜ES細胞研究からのレッスンと臨床応用【伊藤 裕】

  • メタボリックシンドロームと血管再生
  • 血管再生医療におけるsoilとseed:血管再生医療の現況
  • これまでの血管新生因子(soil)研究の問題点と臨床応用への限界
  • 再生医学におけるES細胞の位置づけと血管前駆細胞の同定
  • ES細胞由来血管前駆細胞によるin vitro血管発生分化系の確立と血管形成遺伝子探索への応用
  • ES細胞由来血管前駆細胞の幹細胞移植治療への応用
  • サルES細胞からのVPCの同定とマウスとの比較:ES細胞の種差の問題
  • ヒトES細胞の血管再生医療への応用の試み

8. 骨髄細胞と動脈硬化【佐田政隆】

  • 動脈硬化と平滑筋細胞
  • 近接した血管中膜の平滑筋細胞が増殖するという仮説
  • Rossの仮説では説明に苦慮する現象
  • 骨髄由来細胞の移植後動脈硬化への関与
  • 血管形成術後の内膜肥厚,再生内皮への骨髄細胞の関与
  • 粥状動脈硬化病変への骨髄細胞の関与
  • 骨髄KSL分画から平滑筋細胞への分化
  • 骨髄細胞関与のモデルによる相違
  • 血管病における細胞蓄積に関する新しい仮説
  • 「骨髄由来平滑筋様細胞」の起源としての「細胞融合」

9. KLF5と心血管組織リモデリング【真鍋一郎,永井良三】

  • 平滑筋細胞の形質変換
  • Kr ppel-like factor(KLF)ファミリー
  • KLF5は心血管病の形成に重要である
  • KLF5による遺伝子発現制御
  • 中胚葉系細胞分化・活性化におけるKLF

第3章 治療への展開

概論:治療への展開【室原豊明】

  • 再生医療 (遺伝子・細胞治療)
  • 再生医工学 (組織工学)
  • 薬剤と抗動脈硬化作用
  • 薬剤塗布ステント
  • 核酸医薬
  • 夢の動脈硬化予防ワクチン

1. 遺伝子治療による血管新生療法【牧野寛史,荻原俊男,森下竜一】

  • 治療的血管新生
  • 血管新生療法の手段:遺伝子導入法,導入効率
  • 血管新生療法への応用

2. 細胞移植による血管再生医療〜末梢性血管病から心臓病まで【松原弘明,王 英正,辰巳哲也,正木浩哉,神畠 宏,岩坂壽二】

  • 血管内皮幹細胞と血管新生
  • 血管新生療法
  • 骨髄幹細胞移植によるASO・バージャー病虚血下肢への血管新生医療
  • 血管新生タンパク質・遺伝子や造血性サイトカインを用いた血管新生療法
  • 大動物狭心症モデルでの細胞移植
  • 重症狭心症への臨床応用
  • 心臓由来心筋幹細胞の発見

3. tissue engineering技術による血管の再生【内藤祐次,新岡俊治,松村剛毅,日比野成俊,三宅武史,村田 明,黒澤博身】

  • 基礎的研究の進歩
  • 臨床応用

4. 抗動脈硬化薬としてのスタチンの多目的作用【平瀬徹明,野出孝一】

  • スタチンの細胞内シグナルに対する作用
  • スタチンの抗炎症作用 3.スタチンと血管再生

5. レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系阻害薬【光山勝慶(旧姓:金 勝慶)】

  • RA系阻害薬の抗動脈効果作用と機序
  • 血管リモデリングにおける酸化ストレス:ASK1の役割
  • 血管リモデリングに対するACE阻害薬とARBの併用効果
  • アルドステロン受容体ブロッカー

6. 薬剤溶出性ステント(DES)【尾崎行男】

  • 冠動脈インターベンション(PCI)の導入と問題点
  • ステント再狭窄に対する取り組み
  • 薬剤溶出性ステントの登場
  • 薬剤プラットフォームとしてのステント素材とコーティング技術
  • 薬剤溶出性ステントに用いられる薬剤
  • 薬剤溶出性ステントとしてのシロリムス
  • sirolimus eluting BX velocity stent臨床成績
  • paclitaxel eluting stent
  • paclitaxel eluting stent臨床成績
  • everolimus eluting stent
  • 臨床的意義

7. 核酸医薬の血管疾患治療への応用【冨田奈留也,森下竜一】

  • 核酸医薬
  • 核酸医薬の投与法
  • デコイ型核酸医薬の血管疾患(再狭窄)に対する応用

8. 動脈硬化ワクチン療法〜基礎研究から臨床応用へむけて【篠原正和,山下智也,横山光宏】

  • 動脈硬化病変の形成と進展における自己免疫機序の関与
  • 動脈硬化病変における自己抗原
  • マクロファージに対する免疫誘導療法による動脈硬化の抑制

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