実験医学増刊 Vol.23 No.6

ダイナミックに新展開する脂質研究

注目のメタボローム解析などから解明が進むシグナル伝達や疾患・生命現象の本質につながる多彩な機能

  • 清水孝雄,新井洋由/編
  • 2005年03月22日発行
  • B5判
  • 238ページ
  • ISBN 978-4-89706-109-2
  • 5,940(本体5,400円+税)
  • 在庫:なし
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生物学的に重要な発見が続き,今とても熱い脂質研究の最新トピックスを最先端で活躍の研究者が解説.生体膜の構成成分,生理活性脂質の原料,エネルギー源としての3大生理機能をおさえた基本から,メタボローム解析や質量顕微鏡などの新しい研究アプローチ法や線虫・ショウジョウバエといったモデル生物を用いた脂質研究まで網羅しています.さらに,脂質代謝異常が引き起こす生活習慣病や神経変性疾患など,臨床分野で注目される疾患と脂質との関わりがわかり,研究者が知っておくべき脂質研究の現状と展望が鳥瞰できます.

目次

概論:脂質生物学の現状と展望【新井洋由】

  • 脂質研究の最新トピックス
  • 脂質研究の今後の課題と期待すること

第1章 生体膜成分としての脂質の機能と動態

1. アシルCoAシンテターゼの最近の動向【藤野貴広,山本徳男】

  • アシルCoAシンテターゼ・ファミリー
  • 長鎖アシルCoAシンテターゼの機能(ACSL)

2. 哺乳動物細胞におけるリン脂質生合成研究の新展開〜制御と輸送【花田賢太郎,西島正弘】

  • 哺乳動物細胞におけるリン脂質生合成経路の概略と制御
  • PCの生合成制御機構
  • PSの生合成制御機構
  • リン脂質生合成と脂質の細胞内選別輸送
  • セラミドの小胞体-ゴルジ体間輸送を司る分子装置CERT

3. ホスホリパーゼD1による調節性エキソサイトーシスの制御機構【Marie-France Bader,Michael A. Frohman(横関健昭,渡邉 寛,金保安則/訳)】

  • PLD1はクロム親和性細胞およびPC12細胞においてエキソサイトーシス部位に局在する
  • エキソサイトーシス過程におけるPLD1の活性制御機構
  • 神経伝達物質放出におけるARFとPLD1の機能的リンク

4. 脂質輸送とABCタンパク質【植田和光,高橋 圭,小林 綾,松尾道憲】

  • ABCA1
  • ABCA7
  • ABCG1
  • ABCG5/ABCG8

5. ジアシルグリセロールキナーゼとホスファチジン酸ホスファターゼの多彩な生理機能【坂根郁夫】

  • ジアシルグリセロールキナーゼ:DGK
  • ホスファチジン酸ホスファターゼ:PAP

6. Gタンパク質の脂質修飾を介したシグナル伝達の調節【深田吉孝,葛西秀俊】

  • 修飾脂質の構造と結合様式
  • Gタンパク質の脂質修飾による機能制御

7. 脂質ラフトの多様性【山路-長谷川顕子,小林俊秀】

  • 脂質ラフトの概念
  • ラフトを構成する脂質の分布と動態

8. オートファジーにおけるリン脂質の役割【一村義信,大隅良典】

  • オートファジー必須遺伝子群:ATG(autophagy-related genes)
  • Atg8-PE結合体の形成
  • Atg8-PE結合反応
  • Atg8-PE結合システムの大腸菌内再構成
  • Atg8-PE結合反応のin vitro解析
  • Atg8-PE結合体の役割
  • オートファゴソームの膜形成に関与するPI3P

第2章 脂溶性シグナル分子と細胞情報伝達

1. ホスホリパーゼA2研究の展開【村上 誠,工藤一郎】

  • cPLA2
  • iPLA2
  • sPLA2

2. エイコサノイド合成系酵素の構造生物〜医薬品の分子作用機能理解とさらなる創薬を目指して【宮野雅司】

  • エイコサノイドとエイコサノイド関連酵素の構造生物
  • アラキドン酸の化学構造
  • COXアイソザイムとNSAIDsのCOX選択性
  • 2種類のプロスタグランジン合成酵素

3. 生体内におけるエイコサノイドの新しい機能【瀬木(西田)恵里,成宮 周】

  • エイコサノイドの生合成経路とその受容体
  • エイコサノイドの生理的・病態生理的役割

4. リゾリン脂質性メディエーターの産生機構【青木淳賢,後藤牧子】

  • リゾホスファチジン酸(LPA)の産生機構
  • スフィンゴシン1リン酸(S1P)の産生機構
  • リゾホスファチジルコリン(LPC)の産生機構
  • リゾホスファチジルセリン(LPS)の産生機構
  • 血小板活性化因子(PAF)の産生機構
  • 2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)の産生機構

5. スフィンゴシン1リン酸の多彩な生理作用〜遺伝子改変受容体欠損マウスの解析から【石井 功】

  • S1P受容体欠損マウスの表現型
  • S1P受容体欠損マウスを用いて得られた最近の知見

6. 内在性カンナビノイド受容体リガンドの作用・代謝・生理的意義【杉浦隆之,岡 沙織,五香麻衣子,岸本成史,和久敬蔵】

  • カンナビノイド受容体
  • 内在性カンナビノイド受容体リガンド
  • 内在性カンナビノイド受容体リガンドの生合成機構と分解機構
  • 神経系におけるカンナビノイド受容体とその内在性リガンドの生理的意義
  • 炎症・免疫系におけるカンナビノイド受容体とその内在性リガンドの生理的意義

7. ホスファチジルイノシトール4リン酸5キナーゼと細胞膜ダイナミクス【金保安則,佐々木純子,佐々木雄彦,宮崎秀幸,中野亜希子,横関健昭,山崎正和】

  • PIP5Kの構造と活性調節機構
  • 分子レベルおよび細胞レベルでのPIP5Kの生理機能
  • 個体レベルでの生命現象におけるPIP5Kの役割

8. ホスホリパーゼCの調節機構と生理機能【中村由和,深見希代子】

  • PLCβ:三量体Gタンパク質とカップリングするPLC
  • PLCγ:チロシンキナーゼ,PI3KシグナルとPLCシグナルのリンク
  • PLCδ:単純な構造ながらも多様な生理機能を有するPLC
  • PLCε:多様な上流シグナルを集約するPLC
  • PLCζ:ついに見出されたCa2+オシレーションファクター

9. 核内受容体による脂質代謝制御機構【槇島 誠,諸橋憲一郎】

  • LXRの機能
  • FXRの機能

第3章 脂質研究の新しいアプローチ

1. メタボロームによる脂質代謝パスウェイ解析【有田正規,田口 良】

  • 質量分析法による脂質メタボロームの測定
  • 脂質メタボロームの同定とデータベース
  • マウス網膜データの視覚化

2. 質量顕微鏡と生体試料の分子イメージング【内藤康秀】

  • 質量顕微鏡の原理と装置構成
  • 質量顕微鏡による生体試料測定の実際
  • 現状の課題とその克服に向けた展望

3. 膜脂質と生物温度センサー〜ショウジョウバエの行動を指標にした脂質生物学の試み【竹内研一,梅田真郷】

  • ショウジョウバエのユニークな膜脂質
  • ショウジョウバエの温度選択行動
  • atsugari変異体と膜脂質

4. オーファン受容体の脂質リガンド探索の戦略【横溝岳彦】

  • 「7回膜貫通型タンパク質=GPCR」ではない
  • 安定発現細胞をつくるときに考えること
  • 細胞内シグナル伝達を用いたスクリーニング
  • スクリーニングに用いる脂質リガンドについて

5. 線虫遺伝学とメタボローム解析による脂質関連遺伝子の機能解析【井上貴雄,高根沢康一,新井洋由】

  • 線虫C.elegansと脂質
  • 線虫のリン脂質プロファイル
  • 細胞内(監)型PAFアセチルハイドロラーゼ〔PAF-AH((監))〕の機能解析

第4章 脂質代謝異常と疾患

1. コレステロール代謝制御と高脂血症〜PPARδとメタボリックシンドローム【酒井寿郎】

  • PPARδの生理的役割
  • PPARδ:脂肪燃焼と肥満
  • PPARδと動脈硬化

2. アディポサイトカインとミオカイン【西澤 均,船橋 徹,下村伊一郎】

  • アディポネクチン
  • マスクリン

3. 動脈硬化症・心血管疾患におけるリポキシゲナーゼの病態生理機能【吉本谷博】

  • リポキシゲナーゼの種類と性質
  • 12/15-リポキシゲナーゼと動脈硬化症
  • 5-リポキシゲナーゼと心血管疾患

4. 脂質メディエーターと免疫,アレルギー疾患【椛島健治】

  • アレルギー喘息
  • 蕁麻疹
  • 炎症性腸疾患(IBD)
  • 接触過敏反応
  • アトピー性皮膚炎(AD)
  • リンパ球がリンパ節や胸腺から外へ出るメカニズム

5. スフィンゴシン1リン酸受容体による癌浸潤・転移の制御とその分子機構【多久和典子,杉本直俊,多久和 陽】

  • S1P受容体はGタンパクを介して細胞運動を正・負に制御する
  • S1P2はG12/13-Rhoを介してRac・化学遊走の抑制を引き起こす
  • S1P3はG12/13-Rho経路共役の強化によりS1P2様抑制性受容体に変貌する
  • マウスメラノーマB16細胞内因性S1P2受容体は遊走・浸潤・転移を制御する
  • 血管におけるS1P受容体の生理的・病態生理的役割

6. 脂質代謝異常と神経変性疾患【守田雅志,今中常雄】

  • 副腎白質ジストロフィー(ALD)とニーマンピック病C型(NPC)
  • 脂質蓄積とラフト構造
  • ステロイドホルモンと神経変性
  • ミエリン形成阻害とアシルCoA合成酵素

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  • 【本書名】実験医学増刊:ダイナミックに新展開する脂質研究〜注目のメタボローム解析などから解明が進むシグナル伝達や疾患・生命現象の本質につながる多彩な機能
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