ドーパミン(DA) は,強化学習,意思決定,行動制御などに非常に重要な役割を果たす神経修飾因子であり,DAニューロンの欠落はパーキンソン病などの障害と関連があることが知られている.黒質・腹側被蓋野のDAニューロンは脳内に張り巡らした軸索からDAを放出させる.DAニューロンの活性化パターンと行動との関係性については,電気生理学やカルシウムイメージングを用いて,これまでに多く研究されてきた.近年,DAニューロンには特定の脳領域を専門的に担当する亜集団が存在することが見出されており(Lerner TN, et al:Cell, 162:635-647, 2015/Beier KT, et al:Cell, 162:622-634, 2015), 脳内にDAは均質に広がるわけではなく,特定のインプットや状態に応じて特異的なパターンがつくられる可能性が示唆されている.しかし,DAがいつ,どこで,どのような濃度変化を起こすことによって動物の行動に影響を与えるのかについては,解析手法の制約からよくわかっていなかった.例えば脳内に留置した微小ピペットを用いて脳髄液を直接解析するマイクロダイアリシスは時空間分解能が著しく低かった.DA受容体のシグナル伝達を蛍光強度の変化によって読みとるCNiFERsや転写因子の活性化によって標識するiTangoといった光学的手法も近年報告されたが,細胞の移植が必要であったり,反応に転写を介するために時間分解能が低いという問題があった.
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