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タンパク質計算設計が医学に応用される時代

東京大学大学院農学生命科学研究科 森脇由隆

薬を合理的に行い,副作用を防ぐためには,標的とするタンパク質のみに作用し,他のタンパク質には作用しないということが望ましい.しかし人体には例えば受容体など類似性が高いながらも異なる生物学的な役割をもつサブタイプが複数存在する場合も多い.そこで,もしサブタイプ間の特異性を創出しているタンパク質表面上の領域を明示的に意識した人工タンパク質設計が可能であれば,それは高確率でサブタイプ特異的かつ作用機序を説明可能なアンタゴニストとなる可能性を秘めている.2019年6月,Luke T. DangとDavid Bakerらはタンパク質の計算分野で大きな成果を報告し続けている高分子構造のモデリングソフトウェア“Rosetta”とタンパク質工学的な実験手法とを組合わせてWntの受容体であるFz(Frizzled)のサブタイプ選択的アンタゴニスト(人工タンパク質)を創出し,その複合体結晶構造解析と生理活性について報告した(Dang LT, et al:Nat Struct Mol Biol, 26:407-414, 2019).

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2019年9月号掲載

本記事の掲載号

実験医学 2019年9月号 Vol.37 No.14
HLAと疾患感受性
自己免疫・アレルギー疾患やがんにおける“自己”の役割

荒瀬 尚/企画
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