海外で研究してみたい,憧れの一流ラボで働きたいと考えたことはないだろうか.海外留学で得られる経験は非常に大きい.しかし,金銭面の負担が大きいのも現実だ.そこで必要となるのが,フェローシップの獲得である.研究者としての能力をわかりやすく証明でき,希望の研究室にも行きやすくなる.今回は読者の皆さんにぜひとも挑戦していただきたいフェローシップと応募までの道のりを紹介したい.
でも,いつから,どうやって準備をはじめればいいのだろうか.応募にはさまざまな準備が必要だ.留学先候補探し,プロジェクトの話し合い,申請書の作成と推敲,推薦書の依頼,面接,英語でのやりとり,時差.しかし,恐れることはない.しっかり準備して臨めば,十分にフェローシップ獲得の可能性はある.ここでは一例として実際に過去のHFSP(ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム)フェローシップ受賞者らがどのように準備したか見てみよう(図2).佐田亜衣子先生(留学先:コーネル大学)は,留学する1年半程前から候補を探し,返信がこないことも見越して早めに連絡をとりはじめている.しかし,留学先決定後に応募準備をはじめたため,いくつかのフェローシップは締め切りに間にあわなかったと振り返る.早野元詞先生(留学先:ハーバード大学)は,さらに早くから準備しHFSPに加えJSPS(日本学術振興会),民間助成金等複数のフェローシップへ応募.英語書類の添削にも時間を要するため,ネイティブの友人にも協力を頼んだそうだ.それでも3人のPIへの推薦書依頼がギリギリになってしまったとのこと.また,HFSPは最大2年の中断が可能で,その期間別の資金が獲得できる上,3年目は帰国後も使用可.うまく制度を組合わせることで,留学前〜帰国後まで長期支援の可能性がある.JSPSとHFSP両者を受給した山形一行先生(ボストン小児病院)は,まず事務局へ相談することの重要性を強調していた.
このように,留学を考えるとまず留学先候補探しに専念しがちだが,自分が留学したい国で,自分が応募できるフェローシップ情報を同時期に調べはじめるのが重要だ.しかし下調べは想像以上に大変で,詳細に気を留めていなかったばかりに,獲得後,思いがけない制限に苦労することもよくあるようだ.あらかじめ各フェローシップのメリット,デメリットを把握しておくことは必須と言える(表).国際的にも評価の高いHFSPは,生活費だけでなく研究費・移転費がつく上,子ども一人ごとの育児手当,給付産休制度等,独自のメリットが多数みられる一方で,PhD取得後3年以内,かつ専門分野を変える必要性があるなど,応募資格には留意が必要となる.その他のフェローシップについては,表とWebサイトを確認のこと.特に,応募資格,帰国制限に注意してほしい.多くの先輩方が涙を飲んできた.
以上,海外ポスドク留学を志す研究者の方に向けて代表的フェローシップ情報をまとめた.先輩の体験談および比較表情報を把握したうえで,自分の目でガイドラインを確認してほしい.フェローシップの獲得は自分自身で開く研究キャリアの登竜門.英語で提案書を書いた経験自体がその後のキャリアパスの貴重な糧となる.HFSPを含め複数の海外フェローシップに応募し,ぜひ獲得してほしい!