2020年10月6日に,京都大学の研究成果の実用化をめざしたイクスフォレストセラピューティクス社(以下,xFOREST)が武田薬品工業との共同研究を開始したニュースを発表した1).研究室出身の博士・現役の博士課程の学生で立ち上げたxFORESTが創業初期にもかかわらず,世界中の技術シーズを見ている大手製薬企業との共同研究契約を締結したというのは,日本の大学発のスタートアップの一つの潮流を感じる.本稿では,xFORESTがなぜ創業直後に大手製薬企業と共同研究の契約に至ったのかをひもときつつ,国内外のバイオベンチャースタートアップの動向について紹介する.共同研究契約につながった一つの大きな要因はアカデミアでのオリジナリティの非常に高いかつ発展性のある研究を実施していたことである.この研究を率いるのは,京都大学のiPS細胞研究所の齊藤博英研究室の樫田氏・小松氏が,合成生物学が現在ほど一分野として立ち上がってきていない時代から研究開発に従事してきたチームであり,現在のxFORESTの技術の根幹を開発してきた.
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