糖尿病はインスリン分泌が不足するために血糖値が上昇する疾患である.インスリンが十分に分泌されていれば,食べ過ぎても太るだけで血糖値が著しく上昇するリスクは低い.一方で免疫異常によりインスリン分泌が枯渇する1型糖尿病や,遺伝や膵疾患でインスリン分泌が高度に低下した症例では,高血糖が遷延し,失明や腎不全などの合併症をきたす.インスリンを産生する膵β細胞は,他内分泌細胞とともに膵島という細胞集塊を形成し,60〜100gの膵臓内のおよそ1%,全身で1g未満程度存在する.患者数の多さや,全身に占める細胞量の少なさから糖尿病は再生医療の領域で常に注目を集めているが,これまでに機能性と持続性をあわせもった膵島を作成することは困難であった.
.....