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長波長を吸収するロドプシンNeoRの発見がもたらすもの

東京都立大学大学院理学研究科 成川 礼

ドプシン,なかでも微生物がもつチャネルロドプシンは,光刺激によってチャネルが開くという性質から,光を照射した神経領域を特異的に活性化する光遺伝学(オプトジェネティクス)の分野で活発に利用されているが,1つ大きな課題がある.チャネルロドプシンは主に480 nm付近に吸収ピークをもつが,この青色光領域は,哺乳動物の細胞内に豊富に存在するヘムなどの分子による吸収効率が高く,脳の深い領域に存在する神経細胞を活性化するためには,外科的な手術によってファイバーを埋め込むなどの工夫が必要という課題である.このような文脈において,生体浸透性の高い遠赤色〜近赤外光を利用することがその突破口となると期待されている.近年では,ランタノイドなどのアップコンバージョンする分子(近赤外光照射によって2光子吸収が起き,青色領域の発光を示す分子)を脳の内部に注入することで,近赤外光照射による脳の奥深くの神経領域の制御も可能となっているが(Chen S, et al:Science, 359:679-684, 2018),外来物質の注入という点で,真に非侵襲的とは言い難い.一方,これまでにロドプシンの吸収を長波長化する試みも行われてきたが,大幅な波長シフトに成功した例はない.

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2021年8月号掲載

本記事の掲載号

実験医学 2021年8月号 Vol.39 No.13
どうして自分だけ狙われる?選択的オートファジー
既成概念を覆す分子機構と生理作用

小松雅明/企画
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