Earth BioGenome Project(EBP)が,2018年の開始から2020年までの進捗と今後の展望について,このほどPNAS誌に特集号を出版した(Lewin HA, et al:Proc Natl Acad Sci U S A, 119:e2115635118, 2022).EBPとは,すべての真核生物のゲノムを統一フォーマットで解読しきることを目的とする国際プロジェクトであり,筆者もゲノム生物学に携わる者として注視していた.EBPは,少なくとも11のaffiliated projectからなっており,複数の参画機関と財源に跨って進んでいる.そのなかでもVertebrate Genome Project(VGP)は先行しており,ハチドリゲノムをNature誌に発表している(Rhie A, et al:Nature, 592:737-746, 2021).VGPは6.C.Q40(すなわち,1 Mb以上のcontig NG50※と,染色体スケールのscaffold NG50,塩基エラー率1/10,000未満)を最低規格として提案しており,リファレンス(参照)ゲノムとして求められるデータクオリティを明快に示した点で影響が大きい.この規格は,現行のヒトとマウスのリファレンス〔それぞれGRCh37(hg19),GRCm38(mm10)〕のクオリティに匹敵し,ロングリードシークエンス技術で充分クリアできる水準であるとされている.
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DOI:10.18958/7013-00004-0000133-00