性染色体による性決定は代表的な性決定様式のひとつである.例えばわれわれヒトの場合,X染色体を2本持つとメス,X染色体とY染色体を1本ずつもつとオスになる.では性染色体はどのように誕生し,進化したのだろうか? 性染色体ももともとは常染色体から派生したものであり,一対の常染色体の片方に優性(顕性)なオス化遺伝子(性決定遺伝子)が生じると,この染色体が原始Y染色体となり,もう一方の染色体が原始X染色体となる.(ちなみにメス化遺伝子が生じるとそれが原始W染色体となり,もう一方が原始Z染色体となる)しかし,原始Y染色体と原始X染色体が減数分裂時に組換えを行うと,これら染色体は混ざり合ってしまい,確立した性染色体には進化しない.これまでのモデルでは,①オスに有利な遺伝子(性拮抗遺伝子)が原始Y染色体に出現する(もしくはもともと存在する)ことで,②オス化遺伝子とオスに有利な遺伝子が連鎖したほうがオスの適応度が上がり,③結果としてこの2遺伝子座間では原始Y染色体と原始X染色体の組換えが抑制され,④偶然生じる逆位などによってこの2遺伝子座の距離が離れるにつれて組換え抑制領域が広がっていく,と考えられてきた
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DOI:10.18958/7011-00004-0000158-00