メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンは,新型コロナウイルス感染症に対して優れた効果を示したものの,まだ課題もある.以前の臨床検体を用いた報告で,mRNAワクチンは全身性の免疫を効率的に誘導したが,肺や気道における局所免疫の誘導は,ウイルス感染によって誘導される免疫と比べて不十分であった(Tang J, et al:Sci Immunol, 7:eadd4853, 2022).この局所免疫は感染や重症化の予防に重要であるが,ウイルスベクターワクチンの研究で,その呼吸器系粘膜への投与により,筋肉内投与と比べ,肺や気道の免疫をより効率的に誘導できることが知られていた(Afkhami S, et al:Cell, 185:896-915.e19, 2022).このような背景で,ウイルスベクターより安全面に優れたmRNAワクチンの肺投与が試みられた(Suberi A, et al:Sci Transl Med, 15:eabq0603, 2023).
.....
DOI:10.18958/7381-00004-0001092-00