かつて古代リビアのジュピター・アンモン神殿近くで塩化アンモニウム(NH4Cl)を含む塩が発見され,「サル・アンモニアック」とよばれた.そうして,アンモニウム(NH4+)とそのガス,アンモニア(NH3)の名はエジプトの神アンモンに由来することとなる.これらの化合物は有毒であり,その独特の強い味―酸味,苦味,塩味―から動物はこれを避ける.しかしその味は特定の文化では好まれ,北欧の塩化アンモニウムで味付けされたソルティリコリスやアンモニアを多く含む鮫の肉などが珍味とされている.その生物学的および文化的重要性にもかかわらず,アンモニウムの味覚受容機構は未解明だった.
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DOI:10.18958/7511-00004-0001650-00