2024年9月19日,ノーベル賞の前哨戦とされるラスカー賞の選考結果が発表された.臨床医学部門では,グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体の作動薬を開発した3人が受賞した.もともと同作動薬は,糖尿病の治療薬として開発された.しかしその後,心臓保護効果をはじめ,慢性腎疾患,脂肪肝,神経変性疾患などへの治療効果が期待でき,また,がん予防薬としても応用可能であるなど,複数の老化関連疾患に対して適応拡大が見込まれると判明した点がラスカー賞受賞を後押ししたのであろう.本邦では,同じく糖尿病治療薬であるSGLT2阻害剤の第2の薬効,すなわち老化に伴って蓄積する老化細胞を生体内から除去する働きを利用した抗老化薬としての臨床試験がはじまろうとしている.これら最新の治験の潮流を読み解くと,世界的な老年人口の増加に伴い,長く生きることへの努力もさることながら,いかに健康に生きるかという “生き方の質” への関心がより高まりつつあることが窺える.
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DOI:10.18958/7641-00004-0001773-00