本コーナーでは,実験医学連載「Opinion」からの掲載文をご紹介します.研究者をとりまく環境や社会的な責任が変容しつつある現在,若手研究者が直面するキャリア形成の問題や情報発信のあり方について,現在の研究現場に関わる人々からの生の声をお届けします.(編集部)
Twitterはsocial networking service(SNS)の一つで,140字以内のテキストや画像,動画,URLをツイートできる.近年,自身の研究成果や分野の論文をTwitterで共有・情報発信する研究者が増えている.筆者らは数年前から研究者や同じ博士課程学生(研究クラスタ)をフォローし始めたところ,研究関係の有用な情報がTwitterにもたくさんあることに気づいた.本稿では,筆者らがどのようにTwitterを研究生活に役立てているかについて,研究情報と研究交流の2点からお伝えする.
Twitterには各ジャーナルや学会が運営するアカウントがあり,掲載された論文や学会主催の講演会,関連する奨学金や研究助成などの情報を集めることができる(おすすめのアカウントを下部に紹介しておく).その他,論文紹介に特化したアカウントでは幅広い分野の論文や研究に触れられ,特定の分野の研究クラスタ内で話題の論文も共有されるので,各分野の最新動向を把握しやすい.筆者らもGoogle scholarや専門ジャーナルで自身の研究に近い論文を定期的に確認しているが,興味深い論文は思うように見つからない.一方,Twitterでは特定のアカウントをフォローするだけで,ゼミで紹介する論文や自身の研究のヒントになるような論文を簡単に見つけ出せる.普段の論文検索に合わせてTwitterでも情報を得てみるのはいかがだろうか?
Twitterは匿名で使えることもあり,あまり表立って聞けないお金の話やキャリアなどのアカデミアをとり巻く諸問題について,立場を越えて気軽に交流することができる.筆者らは博士課程学生が数人しかいない研究科に所属しており,同期やOB・OGの方が少なく,情報がほとんど得られなかった.しかしTwitterを利用することで,お金に関する制度や研究Tips,多様なキャリアといったいろいろな情報を交換することができた.お金に関しては,学振や大学院の授業料免除,日本学生支援機構の返還免除などの情報を得ることができたし,キャリアにおいては,Twitterで知り合った大学院卒の会社員の方から企業への就職活動についてアドバイスをいただくことができた.アカデミアへの就職活動についても,最近ではポスドクやポストの募集をTwitterで宣伝している研究者も多く,手軽にコンタクトがとれるようになっている.ポストを探していることを自らツイートする方も多く,紹介を受けることも少なくないようである1).自身の研究を自身のアカウントで発信し,分野内で認知されていくと,このようにポスト獲得のチャンスが増える.学会は人脈を広げる場でもあったが,コロナ禍のオンライン開催では思うようにいかない.この機会にTwitterでさまざまな方と知り合ってみるのはどうだろうか?
このように,Twitterは研究活動に大変役立つツールである.一方で,流れてくる情報はしっかりと一次ソースで確認する,研究上の機密情報を書き込まないなどに留意する必要がある.これらの点に気をつければ,Twitterが,間違いなくあなたの研究生活を充実させ,さまざまな選択肢を与えてくれる最良のツールの一つになると確信している.
おすすめのアカウント:Cell(@CellCellPress),Nature(@Nature),Science (@ScienceMagazine),日本の研究.com(@researcherjp),生化学若い研究者の会 (@seikawakate),生物物理若手の会(@bpwakate)
三田村学歩,岩村悠真(生化学若い研究者の会 キュベット委員会)
※実験医学2022年1月号より転載