[Opinion―研究の現場から]

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本コーナーでは,実験医学連載「Opinion」からの掲載文をご紹介します.研究者をとりまく環境や社会的な責任が変容しつつある現在,若手研究者が直面するキャリア形成の問題や情報発信のあり方について,現在の研究現場に関わる人々からの生の声をお届けします.(編集部)

第150回 研究者のオンラインコミュニティ活用法

「実験医学2022年12月号掲載」

近年,研究・科学業界においてオンラインコミュニティ(以下,OC)が増えてきている.OCを活用するメリットは,OC内のテキスト交流/勉強会/交流会等を通じて知識・知見・仲間(共同研究につながる事例もある)や第三の居場所が得られるなど多岐にわたる.また異分野の研究者が出会えば,それぞれの知識・経験が掛け合わさり「化学反応」が起きる.本稿では,“OCというフラスコのなかで起きる化学反応をニヤニヤしながら見る”という一風変わった趣味をもつ私(専門は有機化学で,実際にフラスコを見つめていた)目線で,OCとその活用法について述べていきたと思う.

OCが増えている要因はいくつか考えられる.通信環境やスマートフォンの普及に加えて,TwitterやFacebookなどのSNS,Zoom/SpatialChat/Slackなどのコミュニケーションツール,miroやZoomなどのオンラインホワイトボードといったツールの発展・浸透はOCの増加や発展に大きく寄与しているだろう.さらに2019年12月頃からは新型コロナウイルス感染症の影響で人と会う機会が減少したことで,OCに期待が集まっているのかもしれない.

OCにはさまざまな種類があり,参加料(無料/有料),参加者属性(分野特化/大学院生特化/博士号取得者のみ参加/科学全般),参加特典(勉強会やセミナー/交流会/研究者支援/キャリア情報/イベント運営/運営母体の活動に参加/仕事の紹介)などさまざまな形がある.以下,OCの活用においておすすめしたいことを述べる.

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第一に,ワガママを言って欲しい.人間というのは基本的に人の役に立ちたがっている生きものである.それゆえにOCにはGiveしたい人が多くいる.これに対して意外と不足しているのがGiveされたい人,すなわち「これが知りたい!(欲しい!)」等とワガママが言える人である.あなたがワガママを言うとあなた自身はもちろん,人の役に立てた実感が持てた回答者に加えて,その回答を見ることができたメンバー,ひいてはOCを盛り上げたいコミュニティオーナーにも感謝されることになる.Win-Win-Win-Winなのである.

第二に,メンバーにGiveしてみて欲しい.異分野の研究者にとってあなたの研究は“普段聞けないおもしろい研究”である.ゆえに,異分野の研究者を楽しませるという成功体験は積みやすい.また自身の失敗経験や苦労が人の役に立つことも多々ある.このようにGiveすることで自身の価値に気づき自己肯定感が上がる人がみられる.また自身の専門分野を人に教えることで知識の理解が深まったり,逆に課題に気づき成長のきっかけに出会うこともある.

最後に,それぞれ異なるキャリアをもつ多様なメンバーが集まるOCで,ぜひ自身の不安や悩みであったり夢や野望をメンバーにぶつけてみてほしい.各業界にいる先人たちから生の声を聞くことができ,考えがアップデートされたり,ロールモデルが見つかったりするはずである.

以上,OC参加のメリットやOCの活用について述べてきた.ぜひGoogle検索で「オンラインコミュニティ 〇〇(興味の対象)」などと検索しご自身に合ったOCを見つけ,家族・学業(職場)に次ぐ第三の居場所を手に入れて欲しい.研究人生が今より少し,輝きはじめるはずである.

川村智祥(科学系オンラインコミュニティ「理系とーくラボ」代表)

※実験医学2022年12月号より転載

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本記事の掲載号

実験医学 2022年12月号 Vol.40 No.19
個体生存に不可欠な 本能行動のサイエンス
飲水、摂食、睡眠、体温調節─中枢と末梢のクロストーク解明に向けて

岡 勇輝/企画
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