レジデントノート:X線所見を読み解く!胸部画像診断〜読影の基本知識から浸潤影・結節影などの異常影,無気肺,肺外病変のみかたまで
レジデントノート 2018年5月号 Vol.20 No.3

X線所見を読み解く!胸部画像診断

読影の基本知識から浸潤影・結節影などの異常影,無気肺,肺外病変のみかたまで

  • 芦澤和人/編
  • 2018年04月10日発行
  • B5判
  • 146ページ
  • ISBN 978-4-7581-1607-7
  • 2,200(本体2,000円+税)
  • 在庫:あり

特集にあたって

特集にあたって

芦澤和人
(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床腫瘍学分野 教授)

胸部領域における第一選択の画像検査法は?

研修医の皆さん,救急の現場は別ですが,日常臨床で呼吸器疾患が疑われた場合,胸部単純X線写真を撮影せずに胸部CTをオーダーしていませんか? あるいは,胸部単純X線写真を撮影しても,その異常所見を十分に解釈せずに,安易に胸部CTを撮像していませんか? もし,そうだとしたら,決してよい姿勢とはいえません.

CTやMRIなどの画像診断法が普及した現在も,安価で簡便,低被ばくの胸部単純X線撮影は,胸部領域における第一選択の画像検査法です.スクリーニングや病変の存在診断に適しており,ある程度の臨床所見があれば肺水腫や市中肺炎などでは,本来CT撮像は必要ありません.また,病変の経過観察や治療効果判定にも有用です.レストランのメニューのように,あれもこれもという検査の依頼は行わず,まずは胸部単純X線写真を撮影し,十分な読影の後に適応を考えて胸部CTをオーダーしてください.

胸部単純X線読影の基本は?

本特集の「総論:胸部X線読影の基本」では,読影において初学者がまずは知っておくべき基本的な内容を解説していただきました.① 詳細な読影をはじめる前に,被検者の撮影体位,撮影条件(画質良好か),吸気の状態や正しく正面で撮影されているか,をチェックしましょう.② 葉間裂や肺縦隔境界線を含めた正常画像解剖を熟知することもきわめて重要です.③ シルエットサインは,胸部単純X線写真の読影において最も重要なサインです.④ 読影の順番を気にする研修医の先生が少なくありませんが,定まったものはありません.自分で見落とさないような順番を決定したら,常に同じ順番で読影するように心がけましょう.ちなみに,私は,❶ 骨・軟部組織を概観→❷ 横隔膜(肺下縁を含む)→❸ 縦隔・心大血管→❹ 肺門→❺ 肺野の順に読影しています.

胸部単純X線写真で異常所見を見つけたら?

胸部単純X線写真で異常と思われる陰影がみられたら,まずは真の異常であるかを少し考えてください.例えば,“肺結節影”は,第一肋軟骨の石灰化や乳頭のような正常構造物・正常変異などの偽病変でないかを検討する必要があります.反対側の同じ部位との比較が重要ですし,過去画像があれば,時間を惜しまず必ず現在画像と比較読影を行う必要があります.特に既存の肺病変がみられる症例における新たな陰影の抽出には,比較読影がとても有用です.

真の異常と判断したら,肺野に重なる陰影が,肺外病変の可能性がないかも検討してください.「肺外病変のみかた」に,そのコツが記載されています.異常陰影を肺内病変と判断できたら,陰影のパターン分類を行ってください.誌面の都合上,本特集では,「浸潤影,すりガラス陰影」,「結節影」,「びまん性線状影」,「びまん性粒状影」の4つのパターンに関して,用語の定義,重要なX線所見,異常所見の特徴や鑑別診断などの解説をお願いしました.臨床で比較的よく遭遇する代表的な疾患の画像を提示していただいたので,これらの画像を記憶するようにしてください.

無気肺の診断が苦手な研修医の先生が少なくありませんので,「無気肺のみかた」の項を別に設けました.閉塞性無気肺では,閉塞機転である腫瘍自体は胸部単純X線写真上,指摘できないことが多々あります.閉塞性無気肺の診断を誤れば,肺癌の診断の遅れにつながることになります.日頃から,葉間裂の偏位やシルエットサインなどの肺葉性無気肺のX線所見がないかを意識して,読影を行うことを心がけてください.

最後に一言

医学部の学生や研修医の先生から,「胸部単純X線写真の読影は苦手です」という言葉をよく聞きます.確かに,胸部単純X線写真の講義や読影実習の時間が減っており,それが一因であるとも考えられます.しかし,単純X線写真の読影能力をアップさせるためには,自分自身が1例でも多くの症例を経験するしかありません.その際,CT画像を単純X線写真にフィードバックすることで,単純X線所見の成り立ちを考えることが重要です.単純X線写真とCTのいずれかの所見から,もう一方の所見を思い浮かべることができるようになれば,かなりの読影能力を身につけたといえるでしょう.

この特集が,実臨床で皆さんのお役に立つことを心から願っています.最後になりましたが,大変ご多忙な中,重要なポイントを押さえて執筆いただいた諸先生方に心から感謝申し上げます.

著者プロフィール

芦澤和人 Kazuto Ashizawa
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床腫瘍学分野 教授
専門は胸部画像診断

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X線所見を読み解く!胸部画像診断

読影の基本知識から浸潤影・結節影などの異常影,無気肺,肺外病変のみかたまで

  • 芦澤和人/編
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