レジデントノート:皮膚トラブルが病棟でまた起きた!〜研修医がよく遭遇する困りごとトップ9から行うべき対応と治療,コンサルトのコツを身につける!
レジデントノート 2018年9月号 Vol.20 No.9

皮膚トラブルが病棟でまた起きた!

研修医がよく遭遇する困りごとトップ9から行うべき対応と治療,コンサルトのコツを身につける!

  • 田口詩路麻/編
  • 2018年08月10日発行
  • B5判
  • 168ページ
  • ISBN 978-4-7581-1613-8
  • 2,200(本体2,000円+税)
  • 在庫:あり

特集にあたって

特集にあたって

田口詩路麻
(水戸協同病院 皮膚科)

病棟で遭遇する皮膚トラブル!

研修医の皆さん,本誌を手にとっていただき,誠にありがとうございます.本特集を読んでいただいているのは,「皮膚疾患が楽しくて,興味がある」といった積極的な理由より,「よく看護師や患者さんから相談されるけど,どうしたらいいかわからない」といった消極的な理由が多いのではと推察します.

今回の特集では,病棟で遭遇する皮膚トラブルに焦点を当てています.皆さんが現在働かれている病院,地域,環境はさまざまだと思いますが,「共通して活躍する場面,迷う場面,皮膚科医に相談したい場面はどこか?」と考えたときに,真っ先に頭に浮かんだ場所が,「病棟」でした.研修病院に入院病床がないことは稀ですし,担当医となる多くの研修医は病棟のフロントラインで患者さんにとって最も身近な存在です.われわれベテランの医師よりも,研修医の皆さんを信頼し,心を許している患者さんも多いはずです.

研修医の熱意はスゴイ!


僕の働いている病院を少し紹介します.当院は茨城県水戸市にある「水戸協同病院(正式名称は,筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター 総合病院水戸協同病院)」です.ご存知の方もいるかと思いますが,徳田安春先生が総合診療科を立ち上げ,全国に先駆けて大学病院と民間病院の密接なコラボレーションを実現した少しだけ有名な病院です.皮膚科医から見ていても,「これはスゴイ!」と思うことばかり.特筆すべきは,臓器別の垣根がないこと!! これに尽きます.「内科全体が総合診療体制」であり,総合診療科のレジデントチームはすべての多彩な内科疾患をマネジメントすることで,多種の疾患を経験しつつ,日々成長・進化しています.

僕が言いたいのは,そんな環境のなかで,「皮膚疾患もしっかり診られるようになりたい」と彼らが努力し続けているということです.湿疹やじんま疹,帯状疱疹といったcommonな疾患から,薬疹や壊死性筋膜炎などの重症な疾患まで,チーム併診で全身管理を担当してくれたり,個人としても「カビを見つけたい」と,患者さんの趾間から採ってきた鱗屑を皮膚科外来で顕微鏡を使って一緒に覗いたり,「皮膚生検の基本を学びたい」と僕のもとにやってきて自らメスを持ったりと常に前向きで興味津々に取り組んでいます.そんな環境にいたら,どうでしょう?

僕は彼らに教えたくなります.助けたくなります.成長してほしいと思います.

皮膚科医のなかには,「真菌検査は皮膚科医がするもの」「生検なんて皮膚科でなければちゃんとできない」という先生もいるかもしれません.でも,僕はそうは思いません.研修医だってできることは多いし,「やりたいんだったら,教えるからやってみなさい」というスタンスです.彼らが皮膚疾患のプライマリケアを実践してくれたおかげで,助けられたことも多いですし,休日に呼び出されなくて済んだこともあります.

そして,何よりも教えることはこちらの学びになりますし,研修医からモチベーションをもらっているのはわれわれであることは紛れもない事実です.

病棟で遭遇する皮膚トラブルトップ9!

そんな当院の研修医に,「レジデントノートの特集を担当することになったから,アンケートに答えてほしい」と頼んだところ返ってきた,病棟で遭遇する皮膚トラブルのトップ9が,今回の特集の各論に配置されています.それぞれの対応指南を,わかりやすく解説してあります.構成は,写真を多く配置し,写真と症例からクイズ形式で診断を考えて,それに関連する皮膚トラブルを鑑別・網羅できるように心がけました.また,総論では皮膚科にコンサルトする際のポイントと基本的な皮疹の記載,病棟で研修医ができる検査法,ステロイド外用薬の注意点をまとめました.

研修医は病棟という戦場で,時には勇敢に,時には孤独に戦っています.僕はそんな研修医たちに「皮膚で困ったら,いつでも皮膚科外来に来るように」と伝えています.そして来てくれたら,なるべく「今からすぐに診にいこう」と一緒に往診に行くことを心掛けています.と同時に,「これから勤務するすべての病院が,簡単に相談できる環境とは限らない.時には自分で判断しないといけない場面もあるだろうし,他院の皮膚科への紹介を薦めないといけない場面もあるよ」と指導しています.

当院の総合診療科チーフレジデントが先日,初期研修医に話していました.「皮膚科を回るといいよ.僕も回ったけど,細かい診断を正確にすることは難しかったな.でも,病棟で遭遇する皮疹に対して,緊急性の判断ができて,とりあえずの指示ができるようになったのは,皮膚科をローテーションしたおかげかな」

今回,われわれ執筆陣が考えることは,まさにココです! 本特集では ① よく遭遇する皮膚疾患・皮疹を解説し,② 除外すべき緊急疾患を鑑別し,③ 研修医がどこまでやるべきかを解説し,④ 専門医にコンサルトすべきポイントを明記しています.執筆陣は,筑波大学・水戸協同病院でともに働いた後輩医師や,かねてより親交のある第一人者の先生方にお願いしています.僕が「人間的にも尊敬する,一緒に働きたい」皮膚科医の皆さんです(←これ,大切).

研修医の皆さんが,病棟で悩んだとき,看護師から相談されたとき,見たことのない皮疹に遭遇したとき,最初に紐解いていただける,傍に置いてもらえる,そんな特集になれば,喜びに堪えません.


【謝辞】
本特集を完成させるに当たり,「研修医目線」のモノにしたいからと,ご多忙のなか,最終チェックをお願いした水戸協同病院 総合診療科 小林裕幸教授,木下賢輔副医局長,北本晋一先生,児玉泰介先生,児玉祐希子先生,長崎一哉先生,内田卓郎先生に心より深謝申し上げます.

著者プロフィール

田口詩路麻 Shijima Taguchi
水戸協同病院 皮膚科
当院では「皮膚科レクチャー 皮疹伝診」と名付けた皮膚科ミニレクチャーを月に1〜2回開催して,研修医にプライマリケアで活用できる知識と技術を伝えられるようにしています.興味のある方は,いつでも水戸に見学に来てください.

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