特集にあたって Consultation 7 Rules 宗像源之(福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座) 診療に不可欠なコンサルテーション 私は自治医科大学を卒業して3年目から内科医2人・外科医1人の僻地の病院に赴任になりました.知識も技術もない私を多くの患者さんや病院スタッフの皆さんが支えてくださいました.なかでも先輩/後輩医師・他院の先生方にはコンサルテーションでたいへんお世話になりました.その当時はコンサルテーションなしでは,診療にならなかったと思います. もちろん経験を積んだ今でもコンサルテーションなしでは診療になりません.総合内科医としては自分の守備範囲を広げるために研鑽が必要ですが,患者さんを第一に考えてコンサルテーションのタイミングを逸してはいけません. こんな私が今もコンサルテーションの際に自分に課しているルールをあげてみます(表). 1Rule A:All for the Patient 当たり前のことですが,コンサルテーションは患者さん第一主義でなくてはなりません! 「〇〇科の上級医は怖いから」・「怒られるから」・「夜だから」・「休みだから」…それって誰のためですか? 自分のためではないですか? 「患者さんはもう高齢だから」・「患者さんが拒否しているから」・「ご家族の希望だから」…それって本当に患者さんのためなのでしょうか? チーム医療で上級医と一緒に担当しているとはいえ,主治医はあなたです! 主治医として患者さんのことを第一に考えて,行動してください. ただし研修医の皆さん,「自分がするよりもっと手技のうまい上級医にしてもらった方が…」という逃げの考え方はダメです.逃げ癖は一生ついて回ります.上級医の指導のもと,積極的に自分でやってみましょう! 2Rule B:Brief Summary プレゼンテーションは,患者さんの全体像が掴めるように簡潔に行いましょう! できる研修医ほどプレゼンテーションの際に情報を盛り込み過ぎます.時間のない上級医への口頭や電話でのコンサルテーション・夜間や休日のコンサルテーションでは,簡潔に全体像がわかるようにプレゼンテーションしなくてはなりません. またコンサルテーションの目的をはっきりさせることも重要です.文章(紹介状)でのコンサルテーションも同様です.冗長で結論のわからない紹介状もよく見かけます. ① 患者背景:主な既往・年齢・性別… ② 主訴 ③ 現時点での診断・問題点 ④ コンサルテーションの目的 例をあげてみます. 心房細動のため近医通院中の60歳男性. 吐血を主訴に当院救急外来受診. 上部消化管出血と思われます.抗凝固薬を内服しています. 緊急内視鏡検査が必要と考えます. さらに,プレゼンテーション後に上級医の質問に答えられるよう準備しておきましょう.一気に知っている情報すべてを盛り込まないように,必要な情報を適切なタイミングで伝えましょう.そのコツは各論で! 3Rule C:Clinical problem 臨床的に問題となる事項を適切に伝えましょう! 疾患以外に臨床的にコンサルテーション後の検査や治療に影響すると思われる問題点を忘れずに伝えます.特に重要なのが以下の4点です. ① バイタルサインの異常:Vital signs ② 重篤なアレルギーの既往:Allergy ③ 腎機能障害:Kidney injury ④ 抗血栓薬内服の有無:Anticoagulant/Antiplatelet 頭文字をとってVAKAと覚えます.もちろんこれ以外にも大事なことはたくさんありますが,最低でもこれくらいはチェックしましょう. 4Rule D:Decision/Diagnosis その時点での自分の診断・治療方針を考えましょう! 救急外来でも同様ですが,コンサルテーションする前の時点での自分の診断・治療方針を考えてください.そうすることでコンサルテーションの目的も明らかになります.もちろん診断がわからないのでコンサルテーションをすることもあると思います.その場合でも鑑別診断(differential diagnosis)を必ず考えてください. 5Rule E:Explanation 患者さんとそのご家族にきちんと説明しましょう! 患者さんのことを第一に考えてコンサルテーションをするのですが,患者さんやご家族がコンサルテーションを希望されない場合もあります.また急に別の医師がやってきて戸惑う患者さんやご家族もいます.当然のことですが,きちんと患者さんに病状とコンサルテーションの必要性について説明して理解を得てください. 6Rule F:Feedback 必ず自分の診療にフィードバックしましよう! コンサルテーションしたら診療終了ではありません.ここからが重要です.コンサルテーションした後,上級医の診断がどうだったのか・どう対応したのか自分にフィードバックをしましょう.どんな病歴聴取をしたのか.どんな身体診察をしたのか.足りない検査はあったのか.どんな薬剤をどのように使用したのか.どのように患者さんやご家族に説明したのか….実際に自分が困った症例ですので,非常に勉強になります. またコンサルテーションをしたとき,上級医に対していろいろな感情を抱くと思います.自分がコンサルテーションされる立場になったときのことを考え,コンサルテーションしやすい医師になるように自分にフィードバックをかけておいてください. 7Rule G:Gratitude 感謝の気持ちを忘れないようにしましょう! 心筋梗塞は循環器内科が,上部消化管出血は消化器内科が診るのが,当たり前ではありません.目の前の患者さんに「専門外」という言い訳は通用しません.忙しい診療の合間や夜間・休日に上級医にコンサルテーションするわけですので,いつも感謝の気持ちを忘れないでください.気持ちよく上級医にコンサルテーションを受けていただくことが,患者さんの利益にもつながります. おわりに 今風にまとめたConsultation 7 Rulesいかがだったでしょうか? 1つでも皆さんの参考になれば幸いです. 今回の特集では,一過性意識消失・頭痛といった症候や,外科や精神科の対応が必要なケースなど,研修医がコンサルテーションに迷うシチュエーションをとりあげ,症例ベースのドリル形式で解説しています.コンサルテーションのために必要な病歴聴取・身体診察・検査所見について具体的に学んでいきましょう.また,少し珍しいテーマとして,法律的に悩ましいケースでの考え方を辯護士の先生に解説していただきました.こちらもぜひ参考にしてください. 著者プロフィール 宗像源之 Motoyuki Munakata 福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 研修医教育に全力を傾けています.現在 山中先生のもと,研修医と一緒に楽しく働いています.詳しくは,会津医療センター 総合内科のホームページaizu-gim.comをのぞいてみてください.