レジデントノート:頭部CT・MRIが読めるようになる〜異常を見分けるためにまず押さえたい、解剖・撮像法・よく出会う疾患の読影法
レジデントノート 2020年11月号 Vol.22 No.12

頭部CT・MRIが読めるようになる

異常を見分けるためにまず押さえたい、解剖・撮像法・よく出会う疾患の読影法

  • 横田 元/編
  • 2020年10月09日発行
  • B5判
  • 172ページ
  • ISBN 978-4-7581-1652-7
  • 2,200(本体2,000円+税)
  • 在庫:なし

特集にあたって

企画の狙いと画像診断についてよく質問される事柄

横田 元
(千葉大学大学院医学研究院 画像診断・放射線腫瘍学)

本特集の狙い

こういったまえがきは読む方と読まない方がいますが,私はどちらかというと後者の立場であることが多い気がします.そんな私がまえがきを書くというのは何とも皮肉なのですが,折角いただいた誌面ですので有効に使いたいものです.

今回は「頭部画像が読めるようになる」というお題で企画を仰せつかったわけですが,諸々の事情で,できるだけ身近な方々に執筆をお願いさせていただきました.結果として(ほぼ)All Chibaになったのは,医療過疎と言われてしまうことも多い千葉県の底力をみせたかったという思いがあります.そのような私の思惑はさておき,これからキャリアを積み重ねていく読者の方々に,何を伝えればよりよい未来につながるかを考えてみました.

初期臨床研修医や専攻医をみていると,頭部画像に抵抗感がある人は多いようです.私自身も,いまだに頭部CTは読影が難しい検査だと感じています.コントラストが悪く,モーションアーチファクトで,画質が低下することもしばしばです.急性期脳梗塞やくも膜下出血を診断することは容易ではありません.これらを見逃したことがないという者がいたならば,それは頭部CTを読んでいないだけだ…という言葉を聞いたことがあります.これに対しては2つ対処法があり,1つはwindow条件をこまめに変えることで病変を見やすくすること,もう1つは病歴・臨床所見と対比することで責任病巣の感度・特異度を上げることです.頭部CTの読影には,ある程度の神経症候学的な知識が必要です.また,MRIはさまざまな撮像法を組合わせて診断するため,撮像法それぞれの知識が必要です.それを学んでしまえば,CTよりも感度・特異度の高い診断が可能です.

本特集では,そのような知識が身につくように項立てをさせていただきました.総論として,CT,MRIのオーダーをする前に考えるべきこと,撮像法と基本的な表示方法について記載しています.文章化されることが少ない,ことによっては読み飛ばされるようなことを含む項目ですが,ぜひとも各論を読む前に目を通してください.また,画像診断の基本は解剖ですので,画像解剖を確認してください.各論では,多くの疾患をあげたいところだったのですが,脳梗塞,くも膜下出血,外傷に絞っています.特に救急の場面で出会う頻度が高く,画像診断がきわめて重要な疾患ですので,しっかりと学んでください.画像を見慣れるまでは,何が異常か,何が異常でないか判別できないことがしばしばあります.そのため,病的意義の低い所見や偶発発見所見についての項目を設けました.

また,脳神経外科・脳神経内科の立場から,画像選択と利用法についてどう考えているか記載していただく項目を設けました.私は必修化後の医師臨床研修制度の2期生ですが,多くの科をローテートするなかで,各科で画像に対する考え方に違いがあることを強く感じました.本来は,ガイドラインなどで統一されるべき事柄も多くありますし,各施設の事情による,いわゆるローカルルール的な事柄も多いかもしれません.ただ,医療がきわめて複雑化する現代では,頭部という一領域でさえ,すべてを把握することは不可能になっています.各科で知識や手技の得意分野が異なることが,考え方の違いを生んでいるとも推察されます.この多面性を理解することは,チーム医療を行っていくうえで役立つと考えます.

画像診断についてよく質問されること

最近,学生や初期臨床研修医向けに講義をする機会が増えたのですが,少人数を相手にする場合は,1人ひとつ必ず質問するようにお願いしています.そのなかでよく聞かれる事柄について記載しようと思います.年収などを聞かれることもあるのですが,それはもちろん秘密です.

Q1)どうすれば読影が上達しますか?

私が教えてほしい事柄ですが,個人的な経験としては,たくさんの画像をじっくりと時間をかけて見ることが大事だと思っています.量と質をともに…と言ってしまうとそんなの当たり前だろうと言われてしまうわけですが,画像診断は経験値を増やしやすいことを特記しておきたいと思います.画像は多人数で経験を共有することが容易で,デジタル化されている現代では,セキュリティの問題さえクリアすれば,距離は関係がなくなります.画像クイズのようなトレーニングツールは,教科書,学会誌,インターネット上などに多数存在しています.興味があればぜひともチャレンジしてみてください.読影の基本は画像解剖ですので,きれいに撮れている画像とアトラスは,一度じっくりと照らし合わせるとよいでしょう.それを何回かくり返していると,異常を見つけやすくなっていることに気づくはずです.

Q2)おすすめの本を教えてください

多くの分野と同様,画像診断も各領域で深化してしまい,いわゆるバイブル的な教科書はなくなってしまいました.広く浅くの教科書は,最初に読むにはよいのですが,臨床での実用レベルには届いていないことが多いです.各臓器ごとにで,日本語で読みやすく,レベルの高い教科書が複数ある時代となりました.ぜひとも,そういった本を手にとってほしいと思います.

Q3)頭部CT,MRIの撮像法,読影のしかたを教えてください

この特集を読んでください!!

最後に,忙しい臨床のなか,コロナ禍で不自由な生活のなか,原稿を引き受けていただいた先生方に心より感謝を申し上げます.この特集が明日からの診療に役立ち,読者の皆様の,そして患者さんたちのよりよい未来につながることを願っております.

著者プロフィール

横田 元 Hajime Yokota
千葉大学大学院医学研究院 画像診断・放射線腫瘍学
専門:neuroradiology,general radiology
プロフィールを書くということで履歴書を見ていたのですが,卒後15年も経っていました.初期臨床研修医をしていたときがついこの間,志望科をどこにしようかと悩んだのもまだ新鮮な記憶です.最近の楽しみは,2021年に放射線科が新中央診療棟に移転することです.機器も新しくなり,より可能性に満ちた職場になるのではと期待しています.興味があれば見学に来てください.

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頭部CT・MRIが読めるようになる

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  • 横田 元/編
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