特集にあたって 特集にあたって 山田博胤1),和田靖明2)(徳島大学大学院医歯薬学研究部 地域循環器内科学1),名古屋市立大学医学部附属東部医療センター 循環器内科2)) 1FoCUS:研修医がまず身につけたい心エコープロトコール 現代の医療では,多くの診療科で超音波検査が利用されています.従来,超音波検査といえば検査室まで患者さんに来ていただいて施行されることが多かったのですが,近年ポータブルな小型の超音波診断装置が開発されたことも相まって,診察室やベッドサイドで身体診察の一環として施行する検査,point-of-care超音波(point-of-care ultrasound:POCUS)が活用されるようになっています.心臓領域のPOCUSにおける,世界標準のプロトコールに,focused cardiac ultrasound(FoCUS)があります.FoCUSでは,心窩部・傍胸骨・心尖部の3アプローチによる5つの基本断面を用いて,断層法のみの観察で評価をします.昨今の心エコー図検査は多くの観察断面を用いて多数の計測を行う複雑な検査となっており,研修医にはハードルが上がっています.しかし,研修医でもまずはFoCUSから修得すれば心エコーを活用できるのではと,レジデントノート2022年9月号で『心エコー まずはこれから、FoCUS!』を特集しましたが,おかげさまで読者の方々に大変好評でした.そして,その執筆陣に講師を依頼して開催したWEBセミナー※も,多くの研修医や若手医師に参加いただき喜んでいただけました.その裏で,実は誌面制限のために企画時に泣く泣くカットした項目がありました.それを続編として企画させていただくチャンスを今回いただき,『重要疾患を見落とさない! 心エコー 症候別のFoCUS活用術』という特集を組むことができました. 2本特集の特長 特集では,「これだけは見落とせないFoCUSの実践」ということで,症候別のFoCUS活用術をとり上げました.昨今,従来行われていた疾患や医療従事者を中心とした医療ではなく,患者の視点に立って患者の問題を解決しようとする問題志向型システム(Problem Oriented System)の考え方が広まってきています.POCUSは,その場で患者の情報を収集して客観的に評価することができ,それを第三者が見ても理解可能な形にします.そういう意味では,POCUSはまさに問題志向型システムを実現することができるツールといえます.そこで,本特集では,心臓領域のPOCUSであるFoCUSをどのような状況で,いかに活用するかについて解説していただきました.また,各先生方がどのようにFoCUSを習得したか,どのように勉強したらいいか,コラムにしていただきました. 今回も前回と同様に中国四国地方で,実際に現場で心エコーをフル活用して日常臨床をされている若手医師の先生方に執筆をお願いしました.読者の皆様がFoCUSを習得し,それが一人でも多くの患者さんのためになればと,とても忙しいなか執筆していただきました.深く感謝申し上げます.読者の皆さんが,本特集で身につけたFoCUSのテクニックや知識を,明日から自分の目の前の患者さんに役立ていただけることを願っています. 著者プロフィール 山田博胤(Hirotsugu Yamada) 徳島大学大学院医歯薬学研究部 地域循環器内科学 心エコー図検査の普及を目指して各種セミナーを開催してきましたが,たいてい参加者の8割以上が技師さんです.そして,技師さんが上手になると,若い医者も技師さんに頼ってしまい,自分でプローブを持つことが少なくなってしまっています.FoCUSを知ったとき,若いドクターにはこれをできるようになってもらえばいい!と思いました.本誌の2回にわたる特集が,若手医師が自分でプローブを持つきっかけとなってくれたらと祈っています.和田先生と私はEchoBoys116として,FoCUSの普及に尽力して参ります.The Echo WEBでお会いしましょう. 和田靖明(Yasuaki Wada) 名古屋市立大学医学部附属東部医療センター 循環器内科 2023年8月1日付で名古屋市立大学医学部附属東部医療センター循環器内科 教授に着任いたしました.環境が変化しても,「心エコーの習得に尻込みしている人たちの入り口になり得るFoCUSを山田先生と一緒に広めたい!」という気持ちに変化はありません.EchoBoys116は日常診療をもっと良い方向に導くためにFoCUSの習得に取り組む皆さんを応援しています!