レジデントノート:入院時から始める退院調整〜「その患者さん、退院して大丈夫?」よりよい退院支援・退院調整のために研修医が知っておきたい医学的判断の根拠や生活への介入、他職種の視点、施設の概要
レジデントノート 2024年2月号 Vol.25 No.16

入院時から始める退院調整

「その患者さん、退院して大丈夫?」よりよい退院支援・退院調整のために研修医が知っておきたい医学的判断の根拠や生活への介入、他職種の視点、施設の概要

  • 合田 建/編
  • 2024年01月10日発行
  • B5判
  • 154ページ
  • ISBN 978-4-7581-2710-3
  • 2,530(本体2,300円+税)
  • 在庫:あり

特集にあたって

特集にあたって

合田 建
(神戸大学医学部 医学教育推進センター)

「その患者さん,退院しても大丈夫?」

いざ自分の担当患者さんに対して「その患者さん,退院しても大丈夫?」と聞かれて,自信をもって「大丈夫!」と答えられるでしょうか.

初期研修医は日頃,病棟業務を中心に担いつつも退院の医学的な判断は上級医が,患者さんとの調整は専門職(医療社会福祉士や看護師)が行うため,自分で退院を判断し,退院後を知る・考える機会は少ないと思われます.

しかし,初期研修修了後は担当医としてではなく,自身が上級医として退院を判断し,また,「主治医」として入院をマネジメントする機会も多くなります.スムーズな退院ができず,困っている専攻医や若手の医師も多いのではないでしょうか.また,初期研修医も上級医と他職種の板挟みにあって,もやもやすることがあるかもしれません.

今後,少子高齢化が進み,病床数が削減され,地域包括ケアの重要性が指摘されるなか,できるだけ入院中の早いタイミングから退院後の生活に向けてスムーズなケア移行を意識してマネジメントをすることが重要です.そのために,入院時から退院時のゴールをイメージした診療や説明,さらには実際に退院をめざした診療情報提供書の記載や退院支援・退院調整など多職種と協働しながら医師がやるべき仕事・考慮すべきことが数多くあります.

基本的に医師は初期研修で病院診療というセッティングで医師人生がスタートしますが,上記のような内容を系統立てて教わる機会は少ないのではないでしょうか.

本特集の特徴

私は地域医療のメッカといわれる佐久総合病院で,初期研修を含め3年間診療しました.どの診療科をローテートしても,職員が「5-3-2ルール1)(病院の持てる力を10とした場合,5は入院医療に,3は外来医療に,そして2は保健予防活動に費やす)」を意識し,最先端の医療だけでなく,地域に密着した医療の実践をしていました.佐久を離れてからも「5-3-2ルール」を意識して幅広いフィールドでの診療・教育に携わっています.

市中病院の急性期から緩和ケア病棟・地域包括ケア病棟,在宅診療,今年度からは大学病院と,さまざまなセッティングでの診療を経験し,地域や病院の機能によって入院の閾値や退院先の選択肢などさまざまであることを実感しました.この本を手にとっている方々も,自身のおかれている環境はさまざまだと思います.本特集は基本的に初期臨床研修を行う病院のセッティングを念頭におき,初期研修医から若手医師を対象にしていますが,入院診療に携わる誰もに役立つ「入院管理の極意」が詰まっています.

「退院させる」という医療者目線ではなく,いかにして患者さん自身が住み慣れた地域へスムーズに退院していくか,ケア移行を意識した入院管理の極意を,実際に入院マネジメントに関わっている・指導している若手病院総合医を中心に執筆してもらいました.その他,実際に退院調整にかかわる看護師や,医師でありながらも医療社会福祉士やケアマネジャーの資格をもった病院総合医,在宅医療専門医の視点からも理想的な「退院」について執筆してもらっています.執筆者は病院総合医が多いですが,「Patient journey」の視点や「地域中核病院・大学病院の退院調整の考え方」,「感染症・認知症・独居で身寄りのない患者さんの退院までの道のり」,「診療情報提供書の書き方」,「社会福祉士や看護師,ケアマネジャー,診療所医師にとっての退院」など,将来どの専門領域に進んだとしても,入院管理に携わる人であればとても役に立つと思います.さらに,患者さんの価値観や意向,入院前の生活などをどれだけ外来診療等の入院前に把握しているか,患者さんにかかわるすべての医療職にも役立つ内容となっています.

ちなみに,2023年6月に発刊されたレジデントノート増刊「新版 入院患者管理パーフェクト」2)では“病棟診療の勘所 受け持ちのその日から退院までフォローする36項目”というサブタイトルの通り,研修医の病棟での仕事術からよく出合う症候・疾患マネジメントまで,幅広い分野で入院中のマネジメントのTipsが散りばめられています.本特集とセットで通読すれば入院管理の自信がつき,心に余裕をもった病棟診療ができるのではないでしょうか.ぜひ日常診療の助けになればと思います.

最後に,私が代表を務めている日本プライマリ・ケア連合学会 専門医部会 若手医師部門 病院総合医チームでは定期的にメンバーがnoteで記事を書いています.ぜひ登録し,チェックしてください!

引用文献

  • 夏川周介:農村医療にかけた佐久病院の60年.日本農村医学会雑誌,54:838-844,2006
  • 「レジデントノート増刊:新版 入院患者管理パーフェクト」(石丸裕康,官澤洋平/編),羊土社,2023

著者プロフィール

合田 建(Ken Goda)
神戸大学医学部 医学教育推進センター
臨床は急性期~緩和・外来・在宅診療,また教育・研究など,幅広く,欲張りに診療しています.母校に戻り,総合診療の浸透をめざして日々診療・教育しています.プライベートでは3児の父であり,新居を構え,外構工事が進んでいる最中です.さまざまな学会に所属し,活動していますので,どこかでお見かけの際にはお気軽に声をかけてください!

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