レジデントノート:研修医の基本手技10 成功の秘訣・失敗しないポイント
レジデントノート 2024年4月号 Vol.26 No.1

研修医の基本手技10 成功の秘訣・失敗しないポイント

  • 鈴木 諭/編
  • 2024年03月08日発行
  • B5判
  • 154ページ
  • ISBN 978-4-7581-2713-4
  • 2,530(本体2,300円+税)
  • 在庫:あり

特集にあたって

特集にあたって

鈴木 諭
(群馬家庭医療学センター 利根中央病院 総合診療科・救急科/筑波大学附属病院 総合診療グループ)

「手技」教育の現状と課題

初期臨床研修で学び実践していく技術の1つに,各種「手技」があげられます.そんな「手技」,医師としての人生をスタートした皆さんは,自信をもって研修で学び習得したうえで臨床で実践することができていますか? 実践する自信はありますか?

卒後の臨床研修が義務化された当初の「手技」教育は,現在さかんに行われているようなシミュレーター教育や講習会などがないものも多く,各手技における物品準備や実施手順は施設ごとで定められていることがよくありました.また,基本的に指導者である上級医が行う手技を学習者である研修医が「見よう見まね」で習得することが「手技」教育とされている場合が多く,その結果として研修医が習得する手技は指導を受けた施設や指導医の特徴が反映された手技となっていました.

研修医から専攻医,そしてフェローと医師人生を歩むなかで,勤務先の病院やクリニックが変わることは多くの医師が経験します.このとき,新たな勤務先で今まで習得した「手技」を実践しようとした際に,上級医から新たな指導を受けたり手技を介助するスタッフから差異を指摘されたりすることは,よくあることの1つです.

臨床推論や診断のための検査計画等は教育方法や資源が整備されることでoff the job trainingが進み,少なくとも日本国内にいる限りは勤務先が変わったとしても,学び習得する内容に関しては一定の水準が保たれる状況となってきていると思われます.一方で「手技」教育については,医療安全の側面などから侵襲度の高いCVC(中心静脈カテーテル留置術)およびPICC(末梢挿入型中心静脈カテーテル)の講習会が行われるなどの整備が進んできていますが,より低侵襲といわれる手技においては,今でも各施設の基準や手順をもとに教育が行われているのが現状です.また,所属施設の規模や診療体制等により施設間で手技の実施頻度が大きく異なり,必然的にその施設で研修する若手医師における遭遇機会にも差が生まれることとなります.

医師としてどのような専門に進んだとしても一定のレベルを求められる基本手技というものがあります.基本手技を,初期研修医の時期のような医師としてスタートしはじめた頃に標準的な基準や手順で学ぶことは,大切な教育の1つと私は考えています.

本特集のねらい

私は現在,群馬県北部の過疎高齢化が進む中山間地域に位置する利根中央病院に勤務しています.家庭医療専門医として関連診療所勤務も行いながら,主には広大な二次医療圏内における急性期診療も,医療圏内唯一の総合病院の総合診療科(救急科)医師として担当しています.救急外来や予約外患者診療外来は,多くの手技の機会に遭遇する宝庫であり,また若手医師の良質な教育と実践の場にもなっています.当院の初期研修プログラムの特色として「とことん実践シュギ(手技)」というフレーズをうたっており,その通り多くの初期研修医や専攻医が「手技」教育の機会を得るとともに,実践を行っています.

本特集は,当院のような地域第一線の研修病院で実際に若手医師と向き合いながら「手技」教育に携わっていらっしゃる,総合診療科や救急科の先生方に執筆を依頼しています.手技に関しては,初期研修医〜専攻医までのおよそ卒後5〜6年目までに習得する機会が多いと考えられる手技を中心に項目立てを行いました.また,実際に「手技」を実践する際にリアリティをもって確認できるように,動画での解説も取り入れました.off the job trainingとしてだけではなく,手技実践の直前の確認のためにも動画を利用していただければと思います.本特集が「手技」教育を受けたくても内容や機会に恵まれない研修医・若手医師の方々や,「手技」教育をしたくてもできない教育施設の上級医の方々の一助になればと思っております.

最後に,「手技」は実際に自ら手を動かし練習するからこそ身につくものの1つです.研修医・若手医師の皆さんにおいては,ぜひ,本特集を参考にシミュレーション教育等を経て実臨床で実践を積んでいっていただければと思います.

著者プロフィール

鈴木 諭(Satoshi Suzuki)
群馬家庭医療学センター 利根中央病院 総合診療科・救急科/筑波大学附属病院 総合診療グループ
目の前にいる「患者さん」ではなく「その地域に生き生活をしている人」の健康と生活を守るという視点を大切に,医師として自分の周りに集まる人々に寄り添い必要な専門的知識を活かすとともに,自身も地域を学ばせてもらう.中山間地域の過疎高齢化が進む地域内唯一の総合病院で病院総合診療と地域医療,救急災害医療を軸に診療と後進育成に取り組んでいます.

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