レジデントノート:救急心電図 症候と波形から次のアクションが見える!
レジデントノート 2024年5月号 Vol.26 No.3

救急心電図 症候と波形から次のアクションが見える!

  • 舩越 拓/編
  • 2024年04月10日発行
  • B5判
  • 170ページ
  • ISBN 978-4-7581-2715-8
  • 2,530(本体2,300円+税)
  • 在庫:あり

特集にあたって

特集にあたって

舩越 拓
(東京ベイ・浦安市川医療センター 救命救急センター センター長)

救急診療で必要な心電図読解のスキルとは

救急診療の最も基本的な役割である致死性疾患の除外や診断のために,心電図は欠かせない検査です.心電図は低侵襲でコストも安い検査であるにもかかわらず,致死性疾患の代表である急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)に必須とされています.ACSは胸痛のみならず,嘔気や心窩部痛,倦怠感など多彩な症状で来院するため病歴だけでは除外が困難で,心電図が多くの患者に施行されます.ACS以外にも,心電図は心疾患を早期に検出したり(例:心筋炎),疾患の重症度を決めたり(例:三環系抗うつ薬中毒),治療の必要性や反応性の評価に重要な役割を果たします.すなわち,救急外来での研修においては心電図の読解と解釈のスキルを習得する必要性が高く,これが患者の診断と治療の質に直結するといってもよいでしょう.

ではどのように読解すればよいのか,ということを学ぼうとすると,多くの心電図のテキストでは系統的な読解方法が提唱されます.すなわち心拍数やリズム,P波,QRS complex,ST,T波,と順を追って解釈する方法です.学生のころはQRSがどのような電解質の流れで成立しているのかなどを必死で覚えた方も多いでしょう.このような系統的な読解方法は重要ですが,仮にその評価ができたとしても,現場で求められるのは臨床症状との関連付けです.患者は愁訴を抱えて救急外来を受診するわけですから,患者の臨床症状と心電図の所見を結びつけ,適切な診断と治療を導き出すスキルが求められます.つまり異常を認識したうえでそれを解釈する能力が重要なのです.それが救急外来における次の一手につながります.

本特集の構成と特長

そこで本特集では救急外来で高頻度に遭遇する主訴や心電図が大きな役割を担う疾患に焦点をおいて,それぞれの状況で心電図をどのように活用できるのか,という視点から経験豊富な救急医に執筆してもらいました.

最初に逆説的ですが,「正常心電図とは?」という項目を設けました.なんとなく心電図を見てなんとなく大丈夫そう,と判断していることも多いと思いますが,正常と判断するにはどういった根拠があればよいのかをうまく言語化できるようにすると異常がわかりやすくなります.

次に心電図を最もよく読む状況と思われる胸痛時(またはACSを疑った際)の心電図に関して3項目に分けてまとめています.ST上昇型心筋梗塞(ST elevation myocardial infarction:STEMI)は治療までの時間が予後に直結する疾患であり正確な判断が求められますが,ST上昇がないだけで評価を終わらせてはなりません.非ST上昇型心筋梗塞(non-ST elevation myocardial infarction:NSTEMI)のなかでもリスクの高い疾患やACS以外の致死性疾患は心電図でどのように評価すべきか学びましょう.

胸痛に加えて心電図を読む機会の多い症候は動悸と失神ではないでしょうか.動悸は患者が不安定だと自分もドキドキしてしまいますが,適切な治療には正確な心電図の判断が欠かせません.失神の患者において心原性失神は絶対に見逃せないものです.多くの患者で受診時には症状がなくなっているため心電図が決め手になることがあります.

次に研修医の皆さんが困る状況としてペースメーカ挿入中,急性中毒,電解質異常をあげました.これらの患者の診療においてどのように心電図を活用するのかがうまく伝われば嬉しいです.

コラムでは,比較的読む機会の少ない小児の心電図において成人と違うところと同じところ,救急外来における心電図の活用法として注目されているトリアージ時の心電図と救急隊による伝送がどのように未来を変えるのか,心電図検定合格体験について語ってもらっています.

また,よりアクティブに心電図について学べるよう,各項目の冒頭には症例とクイズを挿入しています.理解度の確認にも活用してみてください.

心電図の解釈は経験と継続的な学習によって向上します.基本的な知識を身につけ,ケーススタディを通して学び,実務でスキルを磨くことが大切です.それによって緊急の状況で的確な判断を下し,適切な対応を行うことができます.それにはまず心電図を好きになることが重要と考えています.本特集を読んで少しでも「心電図楽しいかも」,と思ってもらえたら嬉しいです.

著者プロフィール

舩越 拓(Hiraku Funakoshi)
東京ベイ・浦安市川医療センター 救命救急センター センター長
生涯学習者としての医師の成長支援を専門としております.専攻医研修で一緒に成長しませんか.いつでも見学お待ちしております!

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救急心電図 症候と波形から次のアクションが見える!

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  • 2,530(本体2,300円+税)
  • 在庫:あり