レジデントノート:人工呼吸器の設定ドリル〜モード選択・初期設定から離脱まで病態にあった呼吸管理の基礎力が身につく
レジデントノート 2024年11月号 Vol.26 No.12

人工呼吸器の設定ドリル

モード選択・初期設定から離脱まで病態にあった呼吸管理の基礎力が身につく

  • 金子教宏,安田英人,櫻谷正明/編
  • 2024年10月10日発行
  • B5判
  • 170ページ
  • ISBN 978-4-7581-2724-0
  • 2,530(本体2,300円+税)
  • 在庫:あり

特集にあたって

特集にあたって

金子教宏
(亀田総合病院 呼吸器内科/ 亀田京橋クリニック)

この度,『レジデントノート』で「人工呼吸器の設定ドリル」と題して特集を企画することができ,誠に嬉しく思います.

研修医の先生方は「人工呼吸器の管理」をどこで学ぶのでしょう.学生の頃? 先輩から? 実は人工呼吸管理を基本から学ぶ機会は日本ではあまりありません.私も,30年ほど前に駆け出しの呼吸器内科医として集中治療管理を行っていましたが,当時は人工呼吸管理の教科書などはなく,先輩から指導を受けて1日中患者さんの隣にいて,人工呼吸器の設定を変えるごとに血液ガス分析を行い,確認していました.その頃,久留米にある古賀病院の古賀俊彦先生からアメリカでは人工呼吸管理のスペシャリストして呼吸療法士 (Respiratory Therapist:RT)という専門職があることを聞きました.そこで,RTの団体であるAmerican Association for Respiratory Care(AARC)という団体の会員となり,Idaho州のBoise State University Lonny Ashworth教授と知り合いました.現在,私はAARCのなかのInternational Council for Respiratory Care(ICRC/AARC)のExecutive committeeとして活動しています.そのご縁から,Lonny先生に日本に来てもらい医療法人徳洲会湘南鎌倉病院の渡部和巨先生の協力を得て,亀田総合病院で研修医を中心に人工呼吸器の基本を教えていただきました.彼の教育は,基本的な知識を教えた後に,医師にマウスピースを咥えてもらい実際の人工呼吸器を実感させて,人工呼吸器の設定によっては患者さんに苦痛を与えていることも理解させてくれました.さらに,グラフィック波形からさまざまな生理学的な情報を導き出し,それは科学的に患者さんのアセスメントを行うにあたり非常に説得力がありました.彼は,正しい初期設定を行い,グラフィック波形などから正しく評価し,プロトコルに従って,呼吸管理をすることの重要性を強調していました.そこから,ご存知の方も多いと思われる “若手医師のための人工呼吸器ワークショップ” がはじまりました.さらに,Lonny先生は日本中さまざまなところでワークショップを行い,現在多くの地域で行われているワークショップの源流はLonny先生にあると思っています.

今回の特集の目的は,何となく先輩から教わってきた人工呼吸管理を生理学的な基礎から正しく理解し,臨床の現場で使えるようになることです.特に,麻酔科医や集中治療医がいない中小の病院では担当医や研修医が人工呼吸管理を行うことが多いと考えます.専門医が使いこなす難しいモード設定ではなく,研修医が管理可能な基本的なモードや換気様式を理解し,初期設定を行い,グラフィック波形などから患者さんを科学的に正しく評価し,離脱まで行えること,さらには,ARDSや閉塞性換気障害など臨床でよく遭遇する病態での人工呼吸管理ができることを目標にしています.

通常,このような企画ではさまざまな専門医療スタッフが選ばれて寄稿することが多いと思います.本企画の特筆すべき点として,安田英人先生・櫻谷正明先生をはじめとしてほとんどが日本呼吸ケア教育研究会(Japanese Workshop of Education for Respiratory Care:JWERC)のメンバーであるということです.このJWERCの前身は2010年に立ち上げた “若手医師のための人工呼吸器ワークショップ” です.人工呼吸器にあまり接したことがない若い医師や研修医などに対して,10年以上にわたりワークショップを通じて,人工呼吸管理について呼吸生理を基本に,エビデンスとプロトコルに基づいた科学的な評価を行うことができるような教育をしてきました.さらに,JWERCのメンバーは,若い医師や研修医たちとワークショップやSNSを通じてコミュニケーションをとり,何時間もJWERCのスタッフとディスカッションし,彼らが間違いやすいポイントやなぜ間違えるのかを熟知しています.本特集では,人工呼吸管理をするうえで,重要かつ間違いやすい点を問題形式にして,図表を多くし,わかりやすい構成となっています.同じ目標を掲げ切磋琢磨したメンバーにより統一感をもって構成されており,アメリカ呼吸療法士を代表するLonny先生の教育を踏襲しながら10年以上の時間をかけてつくり上げたエッセンスがこの特集に詰め込まれており,1冊の教科書と考えてもいい完成度だと自負しております.単なる研修医向けの特集ではなく,指導者や非専門医の先生にも役立つと思います.Lonny先生やAARCのメンバーならびにJWERCのメンバーに感謝を申し上げたいと思います.

最後に,本特集が研修医をはじめとした臨床医のお役に立ち,呼吸で困っている患者さんの助けになることを祈っております.

著者プロフィール

金子教宏(Norihiro Kaneko)
亀田総合病院 呼吸器内科顧問/亀田京橋クリニック 副医院長
JWERCワークショップディレクター
ICRC/AARC Executive committee
今,私が興味をもっているのが “医療の連続性” です.現在の医療の特徴は,“エビデンスに基づいた多職種による専門性の高い医療” といえるでしょう.しかし,医療が専門化・複雑化することで“医療の連続性”にヒビが入ることがあります.それを防ぐには,幅広い知識が必要です.医師は,患者さんが良くなるために努力しなければいけません.「全ては患者さんのために」.

日本呼吸ケア教育研究会(Japanese Workshop of Education for Respiratory Care)

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人工呼吸器の設定ドリル

モード選択・初期設定から離脱まで病態にあった呼吸管理の基礎力が身につく

  • 金子教宏,安田英人,櫻谷正明/編
  • 2,530(本体2,300円+税)
  • 在庫:あり