循環器の検査に関する問題 問題53,問題54の続き2日前から持続する胸痛を主訴に救急搬送された82歳女性 症例の続き 心臓カテーテル検査後 心臓カテーテル検査を施行したところ,左回旋枝領域が近位部で完全閉塞の所見を認めた(図3).よって,今回の胸痛の原因,また心原性ショックの原因は左回旋枝領域の急性心筋梗塞と診断.血圧低下も遷延していたため,昇圧薬サポートを行い,同部位に対してPCIを行った.最終的に完全閉塞部位に対して薬剤溶出性ステントを1本留置し,手技終了.その後,胸痛症状も改善,バイタルサインも改善.血圧は180 mmHg程度まで上昇したため,昇圧薬使用も中止とした. カテーテル治療終了後,集中治療室に入室準備をしていたところ,突然PEA(無脈性電気活動)となり,心肺蘇生を行ったところ,いったん,ROSC(return of spontaneous circulation)した. PEA の原因精査として,すぐに行うべき検査項目はどれか? ⓐ再度心臓カテーテルを行う ⓑ胸部X線 ⓒ心エコー図 ⓓ造影CT ⓒ心エコー図 急性心筋梗塞発症後の機械的合併症 急性心筋梗塞(AMI)に伴う機械的合併症は,梗塞壊死に陥った心筋組織の部位が破綻し,左室自由壁破裂(FMR),僧帽弁乳頭筋断裂(PMR),心室中隔穿孔(VSP)があげられる. 原因としては梗塞壊死部に起因し,致死的合併症であるため,急性心筋梗塞治療の際には必ず念頭に置くべき合併症である.心筋梗塞治療中,もしくは治療後の急激なショックバイタル,心不全,そして胸痛が出現した場合は機械的合併症が疑われ,迅速な対応が必要である. 早急に診断を行い,診断後,救命のためには外科的介入が重要であり,心臓外科と連携して適切な治療方針を決定していかなければならない.診断のためには,聴診,また心エコー図検査が有用であり,機械的合併症を疑った際には,聴診そして心エコーを用いて,早期診断に努める. 外科的介入が行われるまで,内科的加療(呼吸管理や心不全治療,昇圧薬)を行い血行動態の安定を図り,必要に応じて,心嚢ドレナージや機械的補助循環装置(大動脈内バルーンパンピング)を用いて加療を行っていく.内科的治療での改善はきわめて難しく,また外科的介入を行っても,術中・術後死亡率は依然として高い. 2024/04/12 公開 トップに戻る