上行結腸に便がたくさん溜まってそうですね.よくある便秘症かなと思うんですが,違いますかね.
大腸癌は本邦の臓器別がん罹患率で男女ともに2位となっており,しばしば経験される疾患である.特に中高年以上の貧血を認めた場合に重要な鑑別として考慮される.早期には消化管の通過障害を認めることはないが,進行すると消化管に狭窄や閉塞をきたし,本例のように通過障害の原因となるため,腸閉塞に伴う腹痛や嘔吐,腹部膨満などの症状を呈する.
国家試験的には,内視鏡や消化管造影で診断されることが一般的ではあるが,実臨床では本例のように腸閉塞症状を認めた患者に対して,CT検査を先行することが多い.
今回は,腸閉塞を疑う便貯留などをみた場合の簡便な読影の手順,思考回路について述べる.消化管を胃や肛門からひたすら追跡することを日頃から練習しておく,という方法も悪くはないが,本例の画像をパッと見ると,上行結腸が著明に拡張しているが,下行結腸が虚脱していることに気づくと思う(図1A▶).ということは,この間(つまり横行結腸など)に狭窄の原因が存在する可能性が考えられる.消化管は拡張している方が追跡しやすいため,上行結腸から肝彎曲,横行結腸と連続的に視線を移動していくと,突然拡張がなくなることに気づく.この部分を詳細に観察すると全周性壁肥厚が疑われる像が認められ(図1A▶),結腸がんが示唆される.ぜひWebページで連続画像を用いて練習していただきたい.なお,上行結腸だけでなく,盲腸や終末回腸にも便塊様の構造が連続して認められることも,単なる便秘症ではなく機械的な狭窄が存在する可能性を示唆する所見といえるだろう.
最近はMPR(再構成画像)を簡単に作成できることから,冠状断像(図2)で消化管を追跡する先生もたくさんいる.冠状断像は全体を見渡すという意味で優れるが,特に液体貯留を伴う拡張腸管を追跡する際,ガスと液体の境界でその見え方(濃度)が大きく変化することから,うまく追跡できないこともしばしば経験される.やはり横断像での消化管追跡にも慣れておくことを推奨する.