肺野に多数粒状影があり,右下肺野に腫瘤影を認めます.頸部リンパ節も腫れているので,肺癌と多発肺転移を疑います.
本症例の胸部CTを図2に示す.多数の径1〜3 mmの辺縁明瞭な粒状影がびまん性にみられている.一部は粒状影が集簇して結節影に見えるところもある(図2A➡).
右中葉には気管支を中心とした腫瘤影を認める(図2B➡).経気道的病変を示唆する小葉中心性の粒状影も一部にはあるが,小葉構造と特定の関係をもたない粒状影が多く,胸膜,気管支血管束,小葉間隔壁などに接するものもあり,これらは血行散布病変の特徴である.このような特徴をもつ粒状影を見たら粟粒結核を第一に疑う.
粟粒結核は病変が肺に存在するにもかかわらず,血行性散布によって成立するため肺外結核として扱われる.粟粒結核は初感染結核に連続して起こる早期蔓延型と内因性再燃による晩期蔓延型があるが,本症例は90歳代と高齢であり,肺,あるいは肺外臓器の陳旧性病変が再燃して活動性となり,結核菌が血中に侵入し,肺および全身に広がった晩期蔓延型と考えられる1).ただし,頸部リンパ節腫脹を伴う点は非典型的である.中葉の腫瘤影は血行性に成立した病変が気道に破れ広がったものかもしれない.
X線写真では結節単独が2〜3 mm以上にならないと確認できないことからX線上の粟粒影は微小病変の重なりを見ているものと理解されている2).本症例も粒状影の重なりにより陰影を呈しているものと考えられる.粒状影が融合して結節影を形成することは稀ならずみられる(図1).
本症例はT-SPOT陰性であった.T-SPOTやクオンティフェロン®を含むインターフェロンγ遊離試験(interferon-gamma release assay:IGRA)は感度が90%程度といわれており,高齢者や免疫抑制状態において低下することが知られている.IGRA陰性であっても結核ではないとは決していえないので注意が必要である.
本症例は喀痰,リンパ節穿刺液ともに鏡検2+(ガフキー5号相当),Tb-PCR陽性,Mycobacterium tuberculosisが培養され確定診断となった.