レジデントノートインタビューコーナー『あの先生に会いたい!』では,さまざまなフィールドでご活躍中の先生に,医師として歩んでこられた道のりや,現在,そして将来のこと,さらに私生活とのバランスの取り方などについて語っていただきます.また,本誌に収まりきらなかった内容をホームページ限定で紹介していきます.こちらでは,レジデントノート2009年1月号に収録されているインタビューの一部を,ご覧いただけます.
林 寛之
平林先生(以下敬称略):先生はどうして医者を目指そうと思ったのでしょうか.
林先生(以下敬称略):僕はお医者さんになるよりも,実は宇宙飛行士になりたかったです.その後,宇宙に行くと早く死ぬかもしれないと思ったので,宇宙にロケットを上げる仕事につきたいと思っていました.ただ,高校生のときに,長男の僕が桜島に行くことに親が非常に反対しまして諦めました.それから,僕らの年代は,皆ブラックジャックに憧れていましたから,ブラックジャックのようにすべての人を助けられるかっこいい医者になりたいと思ったのと,地元に帰るということを考えまして,自動的に自治医科大学を選んだというのが正直なところです.今は救急をやっていますが,実は赤髭みたいな生活に憧れていまして,今でも家庭医療学は大好きです.
平林:初期研修医の先生が2年間を終えた時点で,どんな医者になっていてほしいですか?
林:初期臨床研修制度は,そもそも患者さんを断らない医者を作りましょう,というのが目的ですよね.当直して自分は専門外だから診られないということがない…ということは,初期研修の間にとにかく臨床能力を上げてほしいなと思います.「なんでもできるようになれ」ということではないんですよ.自分のできる能力がわかるようになってほしい.「ここはできる」「ここはできない」という垣根や限界が,きちんとみえるような医者になっていれば,3~5年目というのはそこから少しずつ増やしていけば良いだけですので.そういったアドバンスドトリアージを含めた臨床能力を,とにかく上げてほしいなと思っています.自分の力を見極めるということですね.
インタビュアー:平林靖子
林:それから,軽症の患者さんをなるべくたくさん診てほしいなと思います.風邪を馬鹿にするやつは風邪で痛い目にあいます.風邪と思ったら髄膜炎だったとか.軽症というのは山ほど診て初めて軽症というのがわかるものなのです.「何か違う」というのをみようと思ったら飽きるほど軽症を診なくてはいけないと思いますので,少し慣れてきた2年目になってからも軽症を馬鹿にしないで,きちんとこなしていくというようなことを,ぜひやってほしいなと思っています.
また,当直以外は出ないというのではなくて,時間があったら救急外来を手伝いに行ってほしいですね.研修医が堂々と診察しても許されるところは救急外来くらいですからね.そこでこそきちんと診察して能力を上げてほしいなと思います.そこの病院に,たくさん患者さんが来ているのに診に行かないというのは,やはりその人は損をしていると思います.もちろん病院は研修医に診せる努力をしなければならないのですが.生身の患者さんには,いろいろな顔や表情がありますよね? それにいろいろな服装をしてきますし.それと机上の知識とを結びつけるというのは結構難しいんですよ.目の前に患者さんが来ると,「あ,この人なんて派手な服装だろう」と思ったり,「あまり清潔にはみえないな」という印象で入って,疾患がポーンと飛んでしまうという人が結構いますので,人となりを見ながら,なおかつ自分の知識を当てはめていくというのは,やはり数を見なくてはできないと思うんですよね.
このほかに2009年1月号本誌では,【林先生の研修生活】【カナダ留学の真相】【林先生の勉強の秘密】【ERに対する想い】【林先生ご自身の夢】【初期研修医へのメッセージ】を収録!林先生の人物像・医師像に迫っていきます!つづきは本誌で!また,来月からは,本誌に収まりきらなかった内容をホームページ限定で紹介していきます.ご期待ください!
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