本コーナーでは,さまざまなフィールドでご活躍中の先生に,医師として歩んでこられた道のりや,現在,そして将来のこと,などについて語っていただきます.2012年4月号では藤田保健衛生大学 総合救急内科の山中克郎先生にご登場いただき,名古屋第一赤十字病院 神経内科 後期研修医の安藤孝志先生にインタビュアーを務めていただきました.
安藤先生(以下敬称略):山中先生は,常に穏やかで温厚でいらっしゃいますが,怒らないために心がけていることが何かあるのですか.
山中先生(以下敬称略):大学の卒業式で医学部長がスピーチをされたんです.私は,本当にいいかげんな学生で,授業をほとんど出たことがなくて,テニスばかりやっていたんです.そんな学生だったので,卒業式の医学部長のスピーチをあまり聞いていなかったんです.スピーチが早く終わらないかなと思っていたら,あのとき,医学部長の「1つだけ君たちに言っておきたいことがある.これさえ守れば君たちは立派な医者になれる」という言葉が耳に飛び込んできました.そのとき,われに返って聞いたら,「いろいろな業種の人に非常につらく当たられ,怒りたいという気持ちが起こるだろう.でも,そういうときも絶対に怒ってはいけない.このことさえ守れば,君たちは立派な医者になれる」という言葉が耳に残ったんです.よし,医者をやっていく以上はこの言葉だけは絶対に忘れないようにしようと思ったのが最初のきっかけですね.
職場では楽しい雰囲気で仕事をすることが大事だと思っています.なるべく人前では怒らないように心がけています.
安藤:卒業式のときの医学部長の言葉があって,今の山中先生に息づいているということですか.
山中:そうですね.ときどき怒っているのかもしれませんけどね.でも,救急室で怒鳴ったりするのは教育的ではないと思うんです.怒鳴られた人はどうしても嫌な思いをします.私は研修医に言っておいた方がよいことがあれば,後で呼び出して言います.人の前で怒鳴りつけることは絶対にしてはいけないと思っています.
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