診療所実習・研修をのぞいてみよう(企画:PCFMネット)

第4回 診療所教育のFD

  • 北西史直(前PCFMネット代表,トータルファミリーケア北西医院)

PCFMネット関東ミーティングにて

当日の集合写真です.前列右から2 番目が玉木先生,前列左端が筆者

当日の集合写真です.前列右から2番目が玉木先生,前列左端が筆者.

2014年10月4日に東京大学の医学部図書館をお借りして,PCFMネット(プライマリケア・家庭医療の見学実習・研修を受け入れる診療所医師のネットワーク)のミーティングを行いました.ミーティングでは私たちの日々の実践報告と振り返り,テーマを決めたFD(ファカルティディベロプメント)的なことを行いました.

前半は実践報告と振り返りでした.

1「診療所ナースによるトリアージの取り組み」

相模原市国民健康保険内郷診療所(神奈川)土肥直樹先生による子どもの一次救急のトリアージの意義,Appearance・Breathing・Circulation to skinの概説と,その職員教育について.

2「実際どの程度多職種連携進んでいますか~2年半の取り組みを振り返る」

筆者による地域での2年半の多職種連携教育(IPE:interprofessional education)の取り組みと今後の戦略について.

3「多職種学生への教育活動の実際とやりがいについて」

佐藤医院(岡山)佐藤涼介先生による最近の医学生実習の減少と,看護学生・薬学生の実習依頼の増加とその意義について.

偶然にも三者とも多職種(連携)教育がテーマでした.臨床研修必修化の頃から,地域保健・医療研修に象徴されるように,診療所は医学教育機能の1つとして期待されてきましたが,ようやく看護学・薬学教育でも期待されつつあるのではないかと予感します.国際的には医学部では地域における実習の比重が増えています.臨床研修の地域医療研修は,今後その質が問われてくると思います.また家庭医療専門医制度,2017年度からのスタートが予定される総合診療専門医研修制度においても診療所の役割は大変重要になります.今後診療所が医療界全体の教育リソースの1つとして定着していってほしいと思います.

後半は玉木千里先生(京都共立病院)の講師による「Difficult Learning Encounter(DLE)」のワークショップでした.DLEとは簡単に言えば,「その人を教えると欲求不満がたまったり,いらいらしたりする事例」のことですが,それが必ずしも問題が学習者にあるわけではないことから,「difficult learner」という言葉はあまり使わないようにしているそうです.教育するのが難しいと感じたときの対応として,①「そのことが本当か」という確認,② 環境・システムの問題,指導者の問題,学習者の問題,両者の組み合わせの問題の4つの分類に分析,③ 学習者の問題があるとするとどの問題かを考えることが重要であり,またGifted Adultsの概念,予防が大切などのレクチャーをしていただき,その後事例検討を行いました.事例の詳細は省略しますが,PCFMネットにはベテラン指導医も多く,いつの間にか,玉木先生がフィードバックを受けておられるかのような熱気に包まれました.

PCFMネットではこういったミーティングを不定期で行っています.診療所医師も教育能力のブラッシュアップに努めています.ぜひ実習・研修に来てください.1日だけでも構いません.共に学びましょう!