診療所実習・研修をのぞいてみよう(企画:PCFMネット)

第5回 診療所実習・研修のコツ②

  • 根本聡子(小千谷市魚沼市医師会,片貝医院)

研修を受け入れる立場から 〜医師会の関与も含めて

私のPCFMネット(プライマリケア・家庭医療の見学実習・研修を受け入れる診療所医師のネットワーク)参加は2002年,開業から2年経過し病院時代の仲間と遠く離れて孤独を感じていた頃でした.最初は当院単独で受け入れを開始しましたが,その後の経緯で地元・小千谷市魚沼市医師会による首都圏研修医の地域医療研修受け入れへと発展しました.

現在は新潟大学医学部の5年生を月に1名(半日),首都圏の病院研修医を年に2〜3名(1カ月)という受け入れペースです.夫と2人医師とはいえ忙しい診療業務のなかでの受け入れですから,このくらいが持続可能なペースでしょう.

病院研修医用の1カ月プログラムの例(前半部分)

病院研修医用の1カ月プログラムの例(前半部分)

は1カ月プログラムの前半部分の例です.診療所,介護老人保健施設,保健所や住民健診など地域保健医療を俯瞰する内容を指導医として総括します.以前は指導医が自作していたプログラムを今では地域医療コーディネーターが作成してくれ,負担は半減しました.半日プログラムは診療所に密着で,在宅医療を必ず組み込みます.雪国で昔から往診が欠かせなかった背景,普段は病院の予約外来に通う人でも具合が悪いと診療所に往診を依頼してくることなど,私も地域に飛び込んではじめて知ったことでした.チャンスがあれば各プログラムとも住民生活を垣間見る機会を設け,生活者を縁の下で支えるわれわれの役目を浮き彫りにします.そういったなかから病院研修とは違う気づきを得て記憶に留めてもらえれば成功だと思っています.

2015年6月には魚沼基幹病院が開業します.研修医の採用がはじまれば,医師会の研修受け入れ事業は新潟大学地域医療教育センターとタイアップし,基幹病院の地域医療研修も担う形へと拡張します.病院開業に先行してすでに開設された医師会・行政・住民が協働する地域医療魚沼学校は,住民の健康教育を行いつつ,住民の自助努力で医療者側の負担を緩和し医療過疎のなかで医療や地域が疲弊しない方法を一緒に考える場になっています.研修者が健康講話の講師を任されることもあり,研修者にも受講者にも好評です.

当地域の試みにご興味のある方は一度ご見学においでください.PCFMネット経由や医院直接飛び込みの研修受け入れも可能です.高度高齢化を前に,診療所研修は次代を担う医師たちが自らの役割を見極めるために役立つと信じています.私にとっても,学生や研修医と触れ合うことで研修病院と繋がれる感覚が得られ,かつ初心にかえれる貴重な機会です.お会いできる日をお待ちしています.