世界家庭医療機構 アジア・太平洋支部学術大会 in 台北 レポート 金 弘子(飯塚病院総合診療科 飯塚・頴田家庭医療プログラム 後期研修医) レジデントノート2015年7月号掲載 所属はレジデントノート掲載当時のものです [SHARE] ツイート 2015年3月4〜8日,台湾・台北で,世界家庭医療機構(World organization of Family Doctors:WONCA),アジア太平洋支部学術大会(Asia Pacific Regional Conference:APRC)が開催された.家庭医療プログラム後期研修医の視点から本学術大会にはじめて参加した経験を報告する. WONCAとは,1972年に18の団体で設立された学会であり,その会員である家庭医は世界140カ国で50万人にもおよび,年間25億のコンサルテーションを受けている.今回はAPRCであるが,世界各国から家庭医が集まり,“Family Medicine; New Horizons and Challenges”をテーマに開催された. WONCAの挑戦〜家庭医療の魅力 初日,現会長のMichael Kidd教授による基調講演があり,本学術大会のテーマに沿いWONCAの挑戦について次の3つをあげられた.① 家庭医療分野で発展途上である国・地域の支援を通じ,WONCAの役割を強化すること,② 次世代を担う家庭医の重要性を認識するとともに若手家庭医の活動を支援すること,③ 世界保健機関(World Health Organization:WHO)とともにプライマリ・ケアを強化し,家庭医療の役割を国・地域レベルで広めていくこと,である.それに続き,会長が出会ってきた各国の家庭医とその患者・家族,スタッフらの写真がスクリーンいっぱいに映し出された.言葉では言い表せない温かみやその関係性が伝わってくる写真の数々であった. 各国の家庭医から得た学びと刺激 職場の皆さんと(著者 右より2番目). シンポジウム,口頭・ポスター発表を通じてアジア・環太平洋地域のさまざまな取り組みを知ることができた.家庭医駆け出しの私には,家庭医が根付いている国の家庭医から,これからの日本の家庭医療・総合診療の歩みや未来を見せてもらったような気分だった.一国で総合診療が機能するように尽力することはとても大きな挑戦だが,さまざまな国の家庭医が私たち若手を,未来の医療をつくり・担うものとして積極的に育てようと声をかけてくださり励まされた.さらに,家庭医療に携わる人々が,国・地域に留まらず全世界でプライマリ・ケアをベースにして人々の健康を考えるという視点をもちながら,自らのおかれた場所で一生懸命に活動する姿勢に惹かれた. 私にとって,初の国際学会,初の口頭発表,初の台湾…とはじめてづくしのWONCA APRC in 台北だった.期待よりも不安が大きかったが,職場の後押しで日本から飛び出すことができた.そして,素敵な先輩や同年代の方々との出会いや学びをたくさん得られた.ぜひ家庭医療の世界に興味のある皆さんにも参加していただきたい.